【ISO17025:2017】要員の力量確認が大変になった件

2023年5月23日

ISO/IEC 17025:2017では要員の力量確認の力量監視の部分がかなり強化されました。これはISO9001:2015などでも同様になっていて担当者はかなり大変になったんじゃないかと思います。

この記事では直近の更新で変わった要員の力量確認について説明します。

これまでの力量確認

2017年のルール改正以前からISO/IEC 17025には要員の力量確認の規定がありました。以下JISの抜粋です(ISOの古いのありませんでした。JISですみません)

試験所・校正機関の管理主体は・・・すべての要員の力量があることを確実にすること。・・・要員は必要に応じて適切な教育、訓練、経験及び/又は技量の実証に基づいて資格付与されること。

JIS Q 17025(2005) 5.2.1

2005年版のルールでは技量があることを確実にする方法の定義は事業者にゆだねられていました。また要員の資格付与は技量の実証に基づいていれば根拠はあまり重視されていませんでした。(技能の実証の”記録”は必要です)

私の場合ですと「模擬校正で技術管理者がOKしたら」とか「全員回覧後に問題なければ」などの方法で実施していました。

改訂後の力量確認

ISO/IEC 17025の改訂を受けて新しくなったJIS Q 17025は次のようになっています。

ラボラトリは,学歴,資格,教育・訓練,技術的知識,技能及び経験に関する要求事項を含め,ラボラトリ活動の結果に影響を与える各職務に関する力量要求事項を文書化しなければならない。

JIS Q 17025 (2018) 6.2.2

JCSSの制度説明会でも説明されていました。2017版では「力量要求事項を文書化」という文言になっていますが、この「力量要求事項を文書化」は「力量のあるなし判断の明確化」という意味です。

例えば今までのように「模擬校正で技術管理者がいいと思ったらOK」で問題なかったケースでも、改定後では技術管理者はどこまでがOKでどこからがNGなのか文書化する必要があります。つまり、力量確認の中に合否判断の基準を入れなければならなくなりました。

たぶん、ほとんどの事業者は力量を何かの数値にする必要があります。一番簡単なのはテストを受けさせることです。テストはどんなものでもいいですが、50点とか70点とか、合格ラインを決める必要があります。

力量確認の対象

17025の力量確認というと、校正担当ほ技術者が思い浮かびますが、力量確認は内部監査員も含みます。内部監査員が内部監査の実施に十分な力量を持っているか、どうやって判断したらいいか相当悩みました。

校正担当の技術者は外部校正機関の校正と自局の校正を比較して|En<1|のような基準を作ればいいので明確です。(En数については説明省略しますのでググってください)

しかし、内部監査員は別に資格があるわけでもないし、技術があるわけでもないし・・・。結局私のところでは内部監査員にテストを受けてもらうことになりました。

その際私が作成したテストはこんな感じです。

条文問題○×
14.2.1ラボラトリマネジメントは,公平性を確約しなければならない。
24.1.4ラボラトリは,公平性に対するリスクを継続的に特定しなければならない。
34.2.1法的に強制力のあるコミットメントにより、情報の管理について責任をもたなければならない。
46.2.2ラボラトリは,学歴,資格,教育・訓練,技術的知識,技能及び経験に関する要求事項を含め,ラボラトリ活動の結果に影響を与える各職務に関する力量要求事項を文書化しなければならない。
56.2.5ラボラトリは,要員の教育・訓練に関する手順をもち,記録を保持しなければならない

まあ、内部監査員に不合格になってもらっても困るので、ほとんどひっかけなしでISO規則のままです。とりあえず50問ちょっと作りましたのでリンクを作っておきます。

このテストを内部監査の前にやってもらって70点以上の得点をしてもらうようにしました。不合格の場合は合格するまでやり続けます。全部答えが〇なので、ランダムに否定形に変えればいいでしょう。

この他には力量確認の日付と情報など記録して、テストを保管しておきます。記録に関しては改定前と同じです。

まとめ

JCSSの要員の力量確認について説明してみました。改定後の力量確認については次のようになります。

  • 力量要求事項を文書化しなければならない
  • 力量要求が文書化(明確化)されてしまうので多分テストのようなものを行わなければならない
  • 技術者だけでなく内部監査員も力量確認必要

JCSSの力量確認について書いてみたんですが、この情報を使う人は日本で100人いるかいないか?誰も読んでくれないかもしれませんが、役に立つと信じて書いてみました。参考にしてください。