アナログ計器の階級とかデジタル計器の1/2桁(.5桁)の話
最近の私の中のホットなニュースとして、「横河電機がアナログ指示計器の製造をやめる」ということがありました。仕事の中の何割かはこのアナログ計器に関係していたので結構インパクトがあります。
といってもまだまだアナログ計測器は世の中で使われています。アナログ計測器でよくいただく質問が階級の話です。この記事ではアナログ計測器の階級についてちょっと説明します。
アナログ計測器とは?
大きく分けて、計測器の表示にはアナログとデジタルの2種類があります。デジタル表示は数字が数字をいくつも並べて表示します。対してアナログ表示は指針と数直線を使って数字を表現します。
アナログ計器の代表はこの記事の画像のような指針型の計測器ですが、昔の水銀を使った体温計やばねばかりなどもアナログ計器といえます。
アナログ計器は一般的に電源を必要としません。電気関係の計測器の場合は測定対象から針を動かすエネルギーをもらっています。測定対象から電源をもらっている分、測定対象に与える影響(入力インピーダンスとか言う)はデジタル計測器の方が大きいです。
昔はアナログ計測器は電源を必要としないことが大きなメリットでした。例えば屋外のプラントでは電源が用意出来ないことが多く、アナログ計が多く使われていました。でも最近は電池式のハンディ測定器の性能が上がってきたのでそのようなメリットも感じにくいですよねぇ。
そんな時代背景もあり、国内での生産のほとんどを占めていた横河電機もアナログ測定器の生産を終了してしまいました。代替で使えそうな他メーカーは無いそうですので、今後は絶滅に向かっていくでしょう。(部品としてもアナログ表示器はまだ作っているところがあるらしい)
アナログ表示の階級
アナログ計測器には「階級」というものがあります。横河電機の物ならばフロントパネルに「Class ○○」の表記があり、これが階級にあたります。多くの場合、階級は0.5か1.5だと思います。
階級の数値は○○%を意味しています。これはフルスケールに対しての%で、例えば100 Vまで測れる計器の場合、0.5級は測定精度が0.5V以下です。
このへんの定義はJISに詳しく載っています。一部を引用させていただきました。
固有誤差の限度及び基底値計器又は附属品が,標準状態において,測定範囲の限度内で製造業者の指定どおりに使用される場合, 基底値(=フルスケール)に対する百分率で表した固有誤差は,精度階級に対応する限度を超えてはならない。誤差の決定には計器又は附属品の補正表の値は含めない。
JIC C 1102-2011 4.2
今回知ったのですが、誤差の決定には”補正値を含まない”となっています。これはどうゆうことかというと、古くなって補正値が大きくなってきたらその計器はアウトだよと言うことです。
さきほどの100V、0.5級のアナログ計。動作も良好で、定期校正もしているので、経年変化も補正値も完全に把握している場合、測定結果に補正値を加えたら正確な結果が得られますよね。でも補正値が0.5V以上になったらアウトです。
デジタル表示の桁数の「.5」
このような精度や桁の話はデジタル計測器にもあります。よく話題に上るのが「.5桁」の話です。
ちゃんとした計測器メーカーのデジタル測定器は、仕様書に○○.5桁とか○○と1/2桁と書いてあります。この.5桁の表現を聞いてすぐにどんなものかをイメージできますか。
例えば3桁表示は000から999までを表示します。対して2.5桁表示は000から200などを表示します。この200は400になっても600になっても2.5桁です。
なぜこのような効率の悪そうなことをするかというと、この理由は私たちの計測器の使いかたに原因があります。
普通、計測器は1V付近とか10V付近とか、切りのいい数字を測る機会が多いと思います。そうでない人でも校正試験をするときは1Vとか10Vとかを切りのいい数字を試験するはずです。
その場合、例えば3桁表示では9.99の次は一桁落として10.0になります。この際デジタル計器は内部でレンジの切り替えが行われます。本体から「カチッ」と聞こえてくるやつです。
測定には必ずばらつきが含まれるので10.0を測っても9.99だったり10.01だったりします。そうなると10.0を正確に測りたいのに測定器がカチカチ切り替わりまくってうまく測れなくなってしまいます。
これを解決するには、レンジの切り替え点をみんながよく使う1Vや10Vでなく1.2Vや40Vなどちょっと人気の無い点にします。
「12」で切替の具体例を言うと、0.12から1.19まで表示した後レンジが変わって01.2から11.9まで表示となります。下2桁は0から9まで表示しますが、上1桁は0と1しか表示されません。だから2.5桁といわれています。
まとめ
この記事ではアナログ計の階級とデジタル計の1/2桁について説明をしました。
まあ、この内容は知らなくても測定はできるんですけどね。知ってるといろいろ役に立つこともあります。誰かの参考になると嬉しいです。