ISO/IEC 17025(JCSS) 6.5章 トレーサビリティとチャートの書き方について

JCSSの申請では品質マニュアルの他に3つの資料を作る必要があります。1つはトレーサビリティチャート(添付9)、つぎに校正手順書(添付10)、最後に不確かさの算出方法(添付11)です。

これらの書類についてはNITEの申請書類作成のためのてびきに書かれていますが、残念ながら具体的にどういうものを作るのかは書かれていません。不確かさの資料は検索するといくつか出てきますが。

今日はISO/IEC 17025の6.5章トレーサビリティとトレーサビリティーチャートについて説明します。単にトレーサビリティというと計量トレーサビリティ以外も含んでしまいますが、ここでは計量トレーサビリティだけを考えます。

トレーサビリティとは

てびきにも書いてありますが、GUMの定義を引用するとトレーサビリティとは「それぞれが測定不確かさに寄与している、文書化された切れ目のない校正の連鎖によって、計量参照に測定結果を結びつけることができるという測定結果の性質」です。

トレーサビリティの定義だけ見てもトレーサビリティを理解することは難しいです。トレーサビリティについてよく知っている人もいるかもしれませんが、ここではトレサービリティについて少し説明します。

最初の国際単位は1790年にメートル法が作られました。この時にメートル原器とキログラム原器が作られました。メートル条約に加盟している国のものさしはすべてフランスのメートル原器に合わせて作られています。

このあといろいろな単位が加えられ、1960年にSI単位系として定義されました。40歳以上なら覚えていると思いますが、SI系ができたあとに気圧の単位がミリバールからSI系のヘクトパスカルに変更されました。それ以前は天気予報ではミリバール使ってましたよね。

今SI単位は7つあって世界中の単位はその7つの単位の組み合わせで作られています。(アメリカは別ですが)例えば1Vはm2·kg·s−3·A−1です。つまりすべての測定器はもとをたどればこの7つの単位に行き着きます。

7つの基本単位と組み立て単位

7つの単位はそれぞれ発生方法が定義されています。例えば1秒はセシウム133から得られる放射周期の91億倍です。kg、mやそれらの組み立て単位は産業では非常に重要なので、通常は国に1つの国家標準が存在します。

と言っても、国中の計測器の調整に国家標準を使うわけにはいかないので普通は間に標準器を使います。国家標準の次の標準器を特定二次標準器と言って国家標準と突き合わせて比較されている、つまり校正されているので高い精度が担保されています。

通常は三次標準、四次標準を経て、私達の計測器が校正されます。このような国家標準からつながる校正の連なりをトレーサビリティと呼びます。

トレーサビリティチャートの書き方

JCSS制度では、審査を経て登録、認証を受けているため、JCSSロゴ入り校正証明書はトレーサビリティが確保されているものとして扱って良いことになっています。その代わり審査の際にトレーサビリティを説明した資料を提出しなければなりません。この書類はトレーサビリティチャートと言います。

Googleでトレーサビリティチャートを検索するといろいろ出てきますが、Keysightのものが1番わかりやすそうです。

もし初めてJCSS用のトレーサビリティチャートを書くのであればこれを参考にすれば良いでしょう。

Keysight トレーサビリティチャート

トレーサビリティチャートを書く場合は上から4段の行を作ります。キーサイトの例では国家標準、社内上位標準機関、サービスセンター、基本測定量に分かれています。

1番上は上位校正機関を書きます。ここは別に国家標準でなくともOKです。所内の1番上位の標準器をどこで校正しているかを書きます。電気系であれば、例えば、「日本電気計器検定所」と書きます。

次に社内の最上位の標準器(参照標準器)を書きます。例えば、「デジタルマルチメータ」と書きます。JCSSの登録書類であればここにメーカーと型番と製造番号を書きます。

次に社内の校正試験に常用している標準器(常用標準器 or ワーキングスタンダード)を書きます。例えば「キャリブレータ」と書きます。

最後に測定量を書きます。例えば、「直流電圧」と書きます。JCSS用の資料の場合は校正可能範囲も書きます。

上記の直流電圧のチャートの例は校正対象が直流電圧測定器と発生器に成っていますので、トレーサビリティの分岐の部分を記載しています。この場合は申請書の校正試験のスコープに測定器と発生器を書きます。不確かさも両方計算します。ちなみに参照標準器をお客用の校正試験に使用してもかもいません。

まとめ

今回の記事ではJCSSのトレーサビリティチャートの作成方法を説明しました。トレーサビリティチャートはすでに校正事業を実施している事業者さんだったらお持ちのはずなので難しくないかもしれません。

審査の際には上位校正機関から発行された参照標準器の校正証明書をチェックされますので抜けが無いようにしっかり確認が必要です。この部分はポカミスでも、登録一時中止になるような不適合を食らうので気をつけてください。