JCSS必須の”技能試験”を受験した結果
私のいる事業所はJCSSの認定を取得しています。この認定を維持するために令和4年度にJEMIC(日本電気計器検定所)技能試験を受験しました。幸い全点で満足いく結果になりましたが、初めて受験する方や、4年前のことなんか覚えていない方に向けて、技能試験がどのような感じなのか記録を残しておきます。
技能試験とは?
JCSSは「Japan Calibration Service System」の略称で、計器の校正を行う機関の校正能力を評価し認定する制度です。JCSS制度は試験および校正のための一般的な要求事項に関する国際規格ISO/IEC 17025に基づいています。ISO/IEC 17025は、試験所や校正機関が技術的な能力を持っていることを証明するための規格で、その規格の7.7.2項では校正能力の証明のため定期的な技能試験への参加を要求しています。
7.7.2
ラボラトリは,利用可能で適切な場合,他のラボラトリの結果との比較によって,そのパフォーマンスを監視しなければならない。この監視は,計画し,見直さなければならない。また,次のいずれか,又は両方を含まなければならないが、これらに限定されない。
a) 技能試験への参加
注記 JIS Q 17043は,技能試験及び技能試験提供者に関する追加情報を含んでいる。JIS Q 17043の要求事項を満たす技能試験提供者は,能力があるとみなされる。
b) 技能試験以外の試験所間比較への参加
JIS Q 17025 : 2018
要約すると、ラボラトリは(a)技能試験か(b)試験所間比較に参加して自己のパフォーマンスを監視しないといけません。
技能試験に関する規格にISO/IEC 17043があり、ISO/IEC17025は17043認定された試験の受験を要求しています。JEMIC技能試験はISO/IEC 17043の認定を取得しています。
受験してみた
私の事業所は昨年に電気(直流低周波)のデジタルマルチメータの直流電圧を受験しました。ここが重要なポイントですが、JCSSの登録区分が複数あっても、技能試験はその中の1項目だけ4年に1回受験すれば良いことになっています。
1項目の参加費用は88,000円です。項目が増えれば、比例して費用も増えます。費用には巡回器物の輸送料も含まれます。輸送の資料から前後の参加者が分からないようになっています。
技能試験は参加者全員が1台の巡回器物(HP 3458A)を順番に校正し、JEMICの校正値と比較し合否を判断します。参加者は校正試験終了後、巡回器物を次の参加者へ送り、校正証明書をJEMICへ提出します。
受付は4月に入りすぐ募集が始まり2週間で締め切りなので注意が必要です。試験は5月から11月に行われました。1社あたりの校正期間は2週間です。校正期間終了後2週間以内に校正証明書を提出します。試験の結果は2月1日に参加者全員に報告されました。
結果が戻ってきた
技能試験の結果が戻ってきました。技能試験は参加者全員の試験が終わった後、参照局が全体の成績をつけるので、試験時期の早い参加者は半年以上待ちます。
試験結果には下図のようなグラフがついてきます。識別番号(黒塗りしました)のどれかは自分の事業所です。参照値はJEMICの校正値です。上下の誤差線は不確かさです。
合否(満足、不満足)の判定はEn数を使います。下の式から参加者と参照機関の間のEn数を計算し、満足(|En|≦1)、不満足(|En|>1)を決定します。
令和4年度の試験では、当事業所は受験した全点において満足な結果を得ました。この結果はR5年度のJCSS登録更新申請時に申請書に添付して審査機関に提出します。
もしも不満足な結果を出してしまったら・・・
ISO/IEC 17043 付属書C-5に不満足な結果を出した参加者への方針が示されています。
不満足な結果を出してしまった参加者は
・決められた期限内に調査を行い、是正処置を行う
・是正処置の効果を見るため、再度技能試験を受ける
・必要な場合、技能試験員による現地審査を実施する
不満足な結果が出た場合、技能試験主催者のJEMICがそのことをJCSS審査機関であるNITE(製品評価技術基盤機構)に連絡します。その後の審査機関の判断で、条件付きの認定維持や認定取り消しなどの処分があるようです。
最後に:そこまで怖がらなくて良い
最後に読んでいる方を怖がらせてしまったかもしませんが、実際はそんなに怖がる必要はありません。普通にやっていれば失敗はほぼ無いと思います。
それよりも半年も結果の連絡が来ないことが精神的に苦痛です。JCSS担当さんはいつも何かを心配していると思いますので、この記事を読んで少しでも心配が和らいでくれると嬉しいです。