ISO/IEC 17025 (JCSS)解説 技術的記録について

2019年11月4日

17025に限らずISOの規定は何につけても記録が重要です。今回の記事で解説するのはJCSSの記録の中でも「技術的な記録」についてです。

ISO/IEC 17025の中で記録系の文言はたくさん出てきます。一通りピックアップすると次のようになります。

  • 6.2.5 要員に関する記録
  • 6.3.3 環境の記録
  • 6.4.13 設備の記録
  • 6.6.2 外部製品サービス
  • 7.1.8 顧客との記録
  • 7.2.1.5と7.2.2.4 試験方法の記録
  • 7.3.3 サンプリングデータ
  • 7.4.3 試験依頼品の記録
  • 7.5 技術的記録
  • 7.8 報告書の記録
  • 7.9.3 苦情の記録
  • 7.10.2 不適合の記録
  • 7.11 データ管理
  • 選択肢AのISO 9001と重複する部分

こんなに大量にあるんですね。ああ、うんざり。

基本的には8章以降は他のISOと重複する部分(機会があればまたやりたいですが)になります。ここではJCSS特有の7.5 技術的記録について説明します。

技術的記録とは何?

ISO/IEC 17025の7.5はいきなり「個々の試験所・校正機関活動の技術的記録」と書かれていて、特に何の説明や定義もありません。初めて読んだ人は、何?と思うかもしれません。

これは端的に言って試験記録です。校正事業者に限った言いかたになりますが、技術的記録とは顧客の機器の校正試験の際の記録(データ)、自局の標準器の校正の記録、環境管理の記録、その他に導入前試験やバックデータなど、技術者が読み取って記録したデータ(とそれから作られたデータ)全部です。

校正試験では再試験を実施することがあります。試験記録は再試験の際に同様の環境を再現できる程度に詳細でないとなりません。

そのために試験記録には、試験対象の識別(メーカー名、型番、製造番号)、要員、環境記録(温度、湿度、実施場所)、日付、その他に結果に影響するパラメータを記録します。(7.5.1)

ISOに規定されている項目の他に再現に必要と思われるパラメータも記録しておく必要があります。

不確かさの評価

不確かさの算出の方法についてはわからない人は以前書いた不確かさの記事を参照してください。

不確かさの要因には試験のばらつきが必ず含まれます。ばらつき以外のデータは更新しないで使えますが、(7.6.3 注2)試験のばらつきだけは校正試験の際に取ったものを使います。ばらつきの値を更新して不確かさの値を再計算します。(7.6.3)

ばらつきを計算するには3回以上測定する必要があるので、複数回測定します。手動操作で大変な場合は3回でもいいですが、普通は11回以上測ります。11回以上にすると有効自由度を決定する際に無限大にできるので包含係数の計算を省略できます。(NITE包含係数の決定及び有効自由度の評価に関する資料5.2)

私は、以前ばらつきのデータを取る際にいちいちケーブルを外して一番最初の状態まで戻していましたが、デジタル計器ではそこまでする必要は無いと思います。今はサンプリングを一番遅くして1回ずつ取っています。

結果の妥当性の確保

17025は(校正)試験結果に対して妥当性の確保を要求しています。妥当性というのは、得られた試験結果が正しそうか間違っていそうかを判断することです。

自局の標準器であれば校正履歴があれば試験の結果が妥当かどうかは判断できますが、お客さんの計器は履歴を見てというわけには行きません。一回目はどうするの?ってことになります。しかし、もちろんお客さんの計器でもこっそり履歴をとり続けていますけどね。

結果の妥当性を確保するためには17025に記載された方法の内、少なくとも1つ以上の方法を実施しなければいけません。校正試験の場合は次の五択になると思います。

a) 標準物質を使った確認
b) トレーサブルな校正をされた他の測定器による再試験
e) 計測機器を短期間隔で簡易校正する(中間チェック)
f) 試験装置か標準器を変えてみて試験を反復して結果を確認する
j) 試験所間比較

私はf)の試験の反復をしています。試験品と同じ装置を校正して所有しているので、お客さんの試験後に同じ試験方法で自分たちの計器を校正して、正しい校正値になるかを確認しています。

この方法はかなり頑健な方法ですが、けっこうコストがかかるので一般にお勧めできるのかは疑問です。校正事業者全体では中間チェックをしているところが多い印象です。

妥当性確保を記録の点から見ると、妥当性があるかどうかの判断は傾向がわかるように記録した結果を統計的に判断します。(7.7.1)まあ、グラフにしろということですね。中間チェックの記録を定期校正と並べてグラフにしておけばOKです。

まとめ

この記事ではISO/IEC 17025の技術的記録について説明しました。技術的記録とは簡単に言うと試験記録です。また、この記録は不確かさの要因と結果の妥当性確認に使われます。

記事を書いていて、複数回の測定結果を記録することや、妥当性の証拠にする方法とかはどこにも書いてないので、知らない人にとっては良い情報だなと思いましたがどうでしょうか。

今後も良い情報を提供できるように努力していきますのでよろしくお願いします。(特にGoogle検索結果の上位になるようにがんばります)