JCSS(ISO 17025)品質マニュアルの作りかた 第6章3項施設と環境
ISO17025品質マニュアルシリーズ。今日は6章3項の施設・環境です。ここは短いので少し気が楽ですが、自分の事業所でも課題になっているところなので気合入れていきます。
6.3.1 環境条件
試験・環境条件は校正事業に適するものでなくてはならない。また結果の妥当性に影響を及ぼしてはならない。
ISO/IEC 17025 6.3.1
6.3.1の言っていることは特別でなくて一般的なことです。試験をする場所はそれなりに空調等に考慮してね。ということです。
この部分はISOにNOTEがついていて、以下の例が挙げられています。少なくともこれらは考慮しろということですね。
- 微生物汚染
- ほこり
- 電磁障害
- 放射能
- 湿度
- 電力
- 温度
- 騒音・振動
別に上記すべてを完璧にしろということではありません。各事業所で試験の精度に対して妥当だなと思われる程度でいいんです。例えば温度などは±5℃なのか±1℃なのかは各自で決めてよいのです。
しかし、それらのが試験に影響をあたえる場合はどのくらいの影響かを考慮して不確かさに加えないといけません。
一般的に考慮されるべきものが考慮されていないと、監査の時に「○○についてはどのように考えていらっしゃいますか?」とか聞かれて「えっ?」てなると、後で不適合とか懸念事項とかに書かれてしまいます。
6.3.2 文書化
ISOでいつものやつですが、文書化です。私の事業所では環境管理規定を品質マニュアルとは別に作成して文書化しています。規格内で環境要求がある項目では品質マニュアル中に「環境管理規定を参照」と書いています。
環境については(1)環境管理の制限と(2)環境管理の手順があります。(1)では試験室の温度は○~○℃、湿度は○±○%などを規定して、(2)では装置の管理手順や記録手順を書きます。
6.3.3 記録
記録って大変ですよね。必ず必要なのは温度の記録でしょう。それ以外も湿度や酸素濃度とか試験によっては必要です。
簡単なのは記録紙に直接プロットしてくれるような温度計がいいと思います。記録紙をそのまま残せばよいので手間が少ないです。以下のようなやつですね。
温度計にも校正が必要なことは気を付けてください。監査の際に確認されます。
6.3.4 施設管理のPDCA
6.3.4にはレビューについて書かれています。
施設を管理するための手段を実施し、監視し、定期的にレビューしなければならない。これらの手段には、次の事項が含まれなければならないが、これらに限定されない。
a) 試験所・校正機関活動に影響を及ぼす区域への立ち入り及びこれらの区域の使用
b) 汚染、干渉または試験所・校正機関活動への悪影響の防止
c) 両立不可能な試験所・校正機関活動が行われる区域間の効果的な分離
ISO/IEC 17025 6.3.4
「実施し、監視し、定期的にレビュー」というのはPDCAのことでしょう。定期的にレビューをと勝てありますので、年に1回やればよいです。私のところはマネジメントレビューと一緒にやっています。
特段大げさな設備が無ければマネジメントレビューついででOKですが、a)のように立ち入り禁止区域がある場合は、これらの区域の立ち入り許可者や権限付与や立ち入り記録が必要になります。
b)は私の担当している電気の分野なら電源ノイズとかですが、「汚染」というと化学、食品で薬品や細菌の汚染があるんでしょうか。不明ですが、監査でつっこまれそうな部分です。
c)の場合は主に温度です。私の事業所では温度管理している部屋の入室は2重扉になっています。1重だと入退室が多くなると気温が変化します。
また、先ほどの汚染に関してだと、汚染源のある部屋は負圧にするだとか、そういう処置を講じる必要がありそうです。
6.3.5 管理施設外での校正
試験所・校正機関が自身の恒久的管理下に無い場所または施設で試験所・校正機関活動を実施する場合は、この規格の施設および環境条件に関する要求事項が満たされることを確実にしなければならない。
ISO/IEC 17025 6.3.5
これは移動校正車のことではないですね。移動校正車ではなくて標準器を持って行先で場所を借りて校正業務をする業者さんがいるという話を聞いたことがあります。
このような業者さんは校正時に環境・電源・振動・放射線など本項の要求する条件を確認していただなぁと思いました。
温度、湿度の計測はもちろんですが、電源、振動とかも調べてから作業開始だったんでしょうね。「ほこり」とかは自分たちで掃除するんでしょうか。汚すぎて校正作業前に顧客の施設を掃除とか、つらそう。
どちらにしろ、大多数の事業者には関係ない規定でしょう。
まとめ
6章3項は環境についてでしたが、これの他に施設にはセキュリティで入退室管理を求められます。こちらも記録等要求されますので注意が必要です。
17025:2005では整理整頓の要求があって掃除の記録とかを監査の直前につけていましたが、2017ではなくなりましたね。よかった、よかった。