IATF 16949とISO/IEC 17025 (JCSS)の関係

近年、校正の現場でIATF 16949のことについて耳にすることが増えました。IATF 16949とは自動車の国際的な品質マネージメント規格でありIATF(国際自動車産業特別委員会)が国際標準化機構(ISO)の支援を受けて策定した規格です。

このIATF 16949がISO/IEC 17025(いわゆる JCSS)と関係が深い規格なので、その関係について紹介したいと思います。

私はISO/IEC 17025については知識があるのですが、IATF 16949については専門外で、聞いた話をもとに記事を書いています。皆さんにとって重要になる部分は、ご自身で規格書等を読んで真偽を確認してください。

IATF 16949とは

IATF 16949は自動車のメーカーと部品サプライヤーの認証制度で、基本的にはISO 9001と同様の制度です。IATF の監督機関によって認証を受けた審査機関が自動車関連企業を審査し、IATF 16949の要求事項を満たす企業はIATFの監督機関に登録される仕組みです。

この制度により、自動車メーカーは規格に適合していると判断されたサプライヤーから調達を行えるため、数万点以上ある部品すべてに対して品質管理をする必要がなくなります。この規格は自動車メーカーの1次下請けだけでなくすべての下請け会社に要求されます。

IATF 16949はIATFのメンバーである欧米自動車メーカー9社によって作成されています。残念ながらこの中には日本の自動車メーカーは含まれていません。

9社の内訳はGM、フォード、クライスラー、ダイムラー、フォルクスワーゲン、BMW、フィアット、ルノー、プジョーシトロエンです。国別に見ると米、独、仏、伊、英となります。

この内訳を見て違和感があるのですが、例えば、フィアットやルノーよりも売上の多い日本企業にはトヨタ、ホンダ、日産が上がりますが、入っていません。その直後にも三菱、スバル、スズキ、ダイハツ、いすゞ、日野・・・もう書きませんけど、日本には多くの自動車メーカーが存在します。

IATFになる前のISO/TS 16949は2013年に第3版が制定されていますが、第2版のときは日本自動車工業会も参加していました。しかし、第3版では参加を見送っています。

この時になにかがあったんでしょうが、残念ながら日本自動車工業会が参加を見送った理由は見つけられませんでした。しかし、日本のサプライヤーに対しても今後はIATF 16949の要求が広がると思います。

IATF 16949が計測管理に対して要求していること

IATF 16949には次のような要求事項があります。

「組織が検査、試験、又は校正サービスに使用する、外部/商用/独立の試験所施設は…、次の事項のいずれかを満たさなければならない。

― 試験所は, ILAC MRA (International Laboratory Accreditation Forum Mutual Recognition Arrangement-www.ilac.org) の認定機関 (加盟機関) によって ISO/IEC 17025 又はこれに相当する国内基準(例として、中国のCNAS-CL01) に認定され、該当する検査、試験、又は校正サービスを認定 (認証書) の適用範囲に含めなければならない。校正又は試験報告書の認証書は、国家認定機関のマークを含んでいなければならない…」

ISO/TS 16949 7.1.5.3.2

ILAC MRAというのは国際試験所認定協力機構(ILAC: International Laboratory Accreditation Cooperation )が行っている国際相互承認協定(MRA: Mutual Recognition Agreement)のことです。日本ではこの協定によりJCSSとMRAのロゴが入った校正証明書はISO/IEC 17025に認定された試験所が発行したものとして認められます。

私が気にしていたのはIATF 16949に登録されるにはすべての校正をJCSS認定校正機関でやらないといけないのか?ということでした。大きい工場ではすべての計器の校正を外部校正機関に出せないので自局で校正を行っています。そのような自局校正は認められるのか?

規格書では「検査、試験、または校正サービスに使用する、外部/商用/独立の試験所施設は…」となっていますので、すべての計器に対してJCSSロゴいり校正証明書が必要になるわけではなく、自局校正でも問題はなさそうです。

IATF 16949 はISO 9001を補完する規則ですので、ここで校正対象となるのはサービスの適合を検証するために監視又は測定するための機器です。以前に記事にしたのでリンクを貼っておきます。

ISO 9001や14001と違うところは9001や14001は計測器のトレーサビリティを求められているのに対し、IATF 16949ではJCSS校正を求められていることです。

具体的に言うと、9001や14001に使う計測器の校正ではJCSSロゴ無しの校正証明書でOKですが、IATF 16949に使う計測器の校正はJCSSロゴ入り校正証明書でないといけないことになります。(自局校正については不明ですが)

まとめ

この記事では自動車関連の規格であるIATF 16949について紹介しました。IATF 16949ではISO 9001や14001と同様に生産に用いる計測器の管理が必要になりますが、IATF 16949が他の規格と異なる部分はISO/IEC 17025規格に準じたJCSS校正の証明書を要求していることです。

私の知る限りJCSS校正でないといけないのはIATF 16949だけです。9001のような他の規格ではトレーサビリティを求めているだけで、JCSSロゴ入り証明書は求められていません。

たまたま日本自動車工業会はIATFに参加しませんでしたが、加わっていれば国内の車載部品メーカーはすべてIATF 16949の登録を求められていたはずです。海外ではそうなっているはずです。

(このあたりが非現実的と判断されて日本企業はIATF 16949に加わっていないのかもしれません)

日本の自動車メーカーはまだIATF 16949のような厳しい要求を求めていませんが、今の流れだと日本の車載部品も将来的にIATF16949を要求される気がします。