【新任向け】計測器の校正試験とは?
「校正」と検索すると一番ヒットするのは文章校正ですが、ここでは計器校正について書きます。
企業の中には品質管理部署があり、その中に校正担当部署があると思います。校正は一般技術者の感覚では理解の難しい(私は難しかった)技術です。この記事では特に校正担当者になったばっかりの人に向けて「校正」の説明をしたいと思います。
校正試験とは計測器の精度を確認する試験
校正とは、簡単に言うと計測器の精度を確認する試験です。
本来は「較正(こうせい)」と書きますが、 較 が常用漢字でないので現在は校正と書きます。
一般的に校正では合否は判断しません。合否をつけるのは検定と言います。ただし、校正結果をもとに計器の使用可、使用不可を決定しいている企業は多くて、これも間違いではありません。
では、校正は具体的に何かというと、測定機器が表示する値と、その時入力した真の値の関係を求めることです。
個々の計器の表示がどのくらい本当の値とずれているのかを測る試験が校正試験です。
どんなに高価な計器でも精度は落ちていく
校正をよく知らない人が勘違いしがちなことは、「計器の精度は変わる」という事です。
物差しだって経年変化します。見た目にはわかりませんが、何かの下敷きになれば伸びてしまいます。半導体を使った計器はもっと顕著で、大事に保管しても毎年同じ量だけ一方にずれていくことが多いです。
だから定期的に校正を実施します。
計器を補正するために校正結果を使う
校正事業者で校正試験をすると校正証明書と成績書がもらえます。
この成績書には計器がどのくらいずれているのかが記載されています。
先述のようにこの値が小さければOK,大きければNGと合否を判定しても良いですが、計器の再現性(何度やっても同じ結果を出す)が問題ないなら補正をして使うほうが正確です。
1Vの校正値が成績書に”1.001V”と書いてあればこの計器は実際の電圧よりも1mV高く表示されます。だから1Vを測るときは表示から1mV引いて使います。
この数字は同一レンジの中であれば補間が可能です。1Vが1mVずれていたら、0.5Vは0.5mVずれていると考えてよいです。(この関係を線形性といいます)
計器は定期的に校正が必要。
計器に定期校正が必要な理由は、計器の測定能力が時間とともに変わっていってしまうからです。
量子標準と呼ばれる特殊な計器を除けば、ほとんどの計器は時間とともに測定能力が変化するため、定期校正が必要になります。
私は電気抵抗の基準になる”標準抵抗器”を持っていましたが、毎年の校正値がきれいに一直線に変化していくのを見て感動をしました。
定期的に校正をすると、来年の校正値はどのくらいか、年中盤の校正値はどのくらいか正確に予想することができます。
校正周期は12ヶ月+α
気温の上下や企業活動などが1年間を基準に動いているため、計器の校正は1年を基準にするのがいいと思います。でも、必ず1年でなければいけないというわけではありません。
長期的に安定だと分かっている物は周期を2年、3年にすることも間違いではありません。
ただし、その場合は事前に経年変化の量を確認して校正周期を長めに決めておく必要があります。
「校正期限を過ぎてしまったから校正周期を伸ばしてしまおう」と後から長くできるものではありません。
校正期限を校正からちょうど12ヶ月にすると年々校正日が前倒しになってしまいます。ですので普通は校正期限は校正した月の次の月の1日から1年間にします。
毎年同じ月に校正すると考えると分かりやすいです。
校正期限を過ぎた計器は測定ができない
校正をしないまま校正期限が過ぎてしまったら計測器がすぐに精度劣化するわけではありませんが、ISOや法定計測に関わる測定には使えなくなってしまいます。
しかし、校正期限を過ぎても再度校正をすれば、以前と同じように使用することができます。校正期限から再校正の期間だけは使用できません。
前後の期間の正確さが確認されたのでその間の期間も問題ないような気がしますが、校正切れの期間中は使用不可です。
計器は統計的に管理する
計器の校正は製品の性能に関わる部分だけでいいのですが、ある程度の性能以上の計器は全部校正したほうがいいと思います。
いずれ重要な計器に格上げする際に過去の校正履歴が役に立ちます。
私の事業所ではExcelファイルに履歴を追加し、過去の校正値をグラフで見られるようにしています。
長年このグラフを見ていると、この計器はまだ長く使えそうだから標準に使用とか、標準器の引退が近いから機器を更新しようとかの判断材料になります。
でも、この記事は新任の担当者向けでしたので、将来を考えて校正しておくというのは、ちょっと余計な話かもしれません。
とりあえず今ある機器の用途とか把握しておけば業務に役立つんじゃないでしょうか。
頑張ってください。