校正事業者の認定資格「JCSS」は何がメリットなのか?

2020年3月27日

このブログでよく紹介しているJCSSですが、よく考えたらJCSSについてちゃんと説明したことはありませんでした。

JCSSとは計量法の校正事業者登録制度のことですが、登録を維持してくことはとても大変です。詳細も知らずに管理者をやらされて消耗している方も多いんじゃないでしょうか。

実は私そうでした。前の職種と全く関係ない「校正」をいきなりやらされて、その後すぐにJCSSの責任者になりました。その時点でまだ「JCSS更新できないと校正事業ができない」と思って勝手にプレッシャー感じてました。

この記事を見ている人は何かしらJCSSに関わっていると思いますが、まずJCSSを知ることから始めればいいんじゃないでしょうか。いくらか不安が解消されます。

JCSSとは

JCSSとは Japan Calibration Service System の頭文字からつけられた計量法のトレーサビリティ制度の名称です。JCSS制度によって登録された校正事業者はJCSSロゴ付きの校正証明書を発行することでき、JCSSログ付きの校正証明書は国家標準にトレーサブルな校正試験の証拠として利用することができます。

計量法のJCSS登録に関する条文は次のようになっています。めんどくさい人は読み飛ばしてもOKです。

第百四十三条 

計量器の校正等の事業を行う者は、校正を行う計量器の表示する物象の状態の量又は値付けを行う標準物質に付された物象の状態の量ごとに、経済産業大臣に申請して、登録を受けることができる。この場合において、登録に関して必要な手続は、経済産業省令で定める。
2 経済産業大臣は、前項の登録の申請が次に掲げる要件のすべてに適合しているときは、その登録をしなければならない。
一 特定標準器による校正等をされた計量器若しくは標準物質又はこれらの計量器若しくは標準物質に連鎖して段階的に計量器の校正等をされた計量器若しくは標準物質を用いて計量器の校正等を行うものであること。
二 国際標準化機構及び国際電気標準会議が定めた校正を行う機関に関する基準に適合するものであること。
3 第一項の登録は、登録簿に次に掲げる事項を記載してするものとする。
一 登録年月日及び登録番号
二 登録を受けた者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
三 登録を受けた者が計量器の校正等を行う事業所の名称及び所在地
四 登録を受けた者が行うのが計量器の校正か、又は標準物質の値付けかの別
五 登録を受けた者が校正を行う計量器の表示する物象の状態の量又は値付けを行う標準物質に付された物象の状態の量(証明書の交付)

第百四十四条 

前条第一項の登録を受けた者(以下「登録事業者」という。)は、同条第二項第一号の特定標準器による校正等をされた計量器若しくは標準物質又はこれらの計量器若しくは標準物質に連鎖して段階的に計量器の校正等をされた計量器若しくは標準物質を用いて計量器の校正等を行ったときは、経済産業省令で定める事項を記載し、経済産業省令で定める標章を付した証明書を交付することができる。
2 登録事業者が自ら販売し、又は貸し渡す計量器又は標準物質について計量器の校正等を行う者である場合にあっては、その登録事業者は、前項の証明書を付して計量器又は標準物質を販売し、又は貸し渡すことができる。
3 何人も、前二項に規定する場合を除くほか、計量器の校正等に係る証明書に第一項の標章又はこれと紛らわしい標章を付してはならない。
4 前項に規定するもののほか、登録事業者は、計量器の校正等に係る証明書以外のものに、第一項の標章又はこれと紛らわしい標章を付してはならない。(登録の更新)

計量法

JCSS制度は計量法の143条と144条を根拠にしています。143条はJCSS登録の条件と144条は登録校正事業者の”できる規定”になっています。

この条文からもわかりますが、既存の校正事業者がJCSS制度によって制約を受けることはありません。校正事業をするのにJCSSが無くても大丈夫なんです。

ただ、JCSS登録は校正事業者が143条の登録条件を満たしていることになるで、校正試験のトレーサビリティの証拠になります。

またJCSSは143条が求める国際標準化機構及び国際電気標準会議が定めた基準を満たす校正事業者の証拠になります。簡単にいうとJCSSロゴは校正品質の証明であると言えます。

JCSSと17025の関係

計量法143条第2項の二にある”国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)が定めた基準”とはISO/IEC 17025のことを指しています。国内では日本語版がJIS Q 17025として定められています。

計量法では一行ですが、ISO/IEC 17025規格に準拠するには非常に多くのルールを守る必要があります。

このブログでも17025についてまとめた記事(超長い)がありますので参考にしてください。

校正事業者が17025に準拠しているかどうかはJCSS制度の監督組織である独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)認定センター(IAJapan)が審査しています。JCSSの審査はどのように行われるかをまとめた記事があります。リンクをつけておきます。

IAJapanの審査を受けて登録を受けると登録証が発行されます。登録を受けると晴れてJCSSのロゴ入り校正証明書を発行することができます。

JCSSと国際相互承認(MRA:Mutual Recognition Arrangement)

ISO/IEC 17025は国際標準です。しかし、日本のJCSSロゴの入っただけの校正証明書は国際的に通用するものではありません。国際的に通用する校正証明書にするためにはJCSSのロゴの他にILAC MRAのロゴも必要になります。

MRAとは参加国間でロゴ入り校正証明書を有効と認めるための枠組みです。MRA参加国では他の参加国で取得した17025準拠の校正証明書でも有効な校正証明書として認められます。

JCSSを監督するIAJapanもMRAの枠組みに参加しています。このMRAを運用している組織がILAC (International Laboratory Accreditation Cooperation) です。

JCSSの審査を通過すると登録を受けることができますが、MRAでは認定を受けることができます。ですので”登録”はJCSSのことで”認定”はMRAのことを指します。

MRA認定はJCSS登録と同時に取ることができます。MRA認定を追加することで審査が4年に一度から2年に一度になります。その他にも小さな差異があるようですが、対策が必要なものはありません。

日本ではJCSSが校正事業者を制限することはありませんが、海外もすべて同じとは限りません。一部の国では政府調達や輸出入の際に、ISO/IEC 17025準拠の校正証明書の提出が求められるそうです。

特別な理由が無ければMRAも取った方が良いでしょう。期間も4年ごとより2年ごとの方が登録を継続していくには都合が良いです。

JCSSとトレーサビリティ

計量法の143条2項一には特定標準に連鎖して校正された標準器を使うことが、登録の条件となっています。ここに出てくる特定標準は国家標準のことです。

例えば電圧の国家標準はジョセフソン電圧標準器という量子標準器です。これはつくば市の産業技術総合研究所にあります。

JCSS校正は国家標準へのトレーサビリティが保証されているので、どんな電圧計でも、校正試験に使った標準器を校正した標準器を校正した標準器・・・と上にさかのぼっていくとこの国家標準にたどり着きます。

特定標準器は各国に1つだけ存在しますが、1つだけだとリスクがあるので特定副標準器と呼ばれるスペアを持つことが認められています。

また、特定標準器から直接校正を行った標準器を特定二次標準器といいます。特定二次標準器の校正証明書にもロゴが印刷されていますが、特定二次標準器のJCSSロゴは小文字のjcssになっています。

まとめ

この記事ではJCSSについてをまとめましたが、私が良く受ける質問を参考にするとよく間違われる点は次のようになります。

  • 校正事業者ならJCSS登録が必要というわけではない
  • JCSSロゴ入りの校正証明書は国家標準へのトレーサビリティが保証されている
    (トレーサビリティを証明する書類は不要)
  • 校正証明書が海外で通用するにはJCSSに加えてMRAのロゴも必要

JCSSを取得予定、顧客からJCSSロゴ入り校正証明書の提出を求められているという人は参考にしてください。