計測器の校正コストを劇的に削減する方法

2020年2月10日

私は校正事業者で電気計器の校正試験を10年以上担当しています。皆さん景気が悪くなると校正費用を一番に削る割に、校正費用を無駄にかけている人が多いな〜といつも感じています。この記事では計測器の校正コストを劇的に削減する方法とその効果について説明します。

計測器の校正試験

企業で使われている計測器は定期的な校正試験が必要です。校正試験というのは計測器が所定の性能を持っていることを確認するための試験です。どんなに高性能の計測器でも真の値に対して必ずズレがあります。このズレは時間と共に変化して行くため、計測器の性能を確認するための校正試験が必要になります。

とはいえ企業のものづくりの現場においてすべての計測器を校正する必要はなく、ISOやJISでは、要求事項に適合するための計測器に限定して”適切な状態”、つまり定期校正を行っている状態を維持しなさいとしています。

多くの企業ではその計測器のメーカーに依頼して一括校正(おまかせ校正)をしているようです。メーカーの一括校正なら間違いがないし、校正のことを深く理解する必要がありません。しかし、メーカーの一括校正は無駄な校正も含まれていることが多く実際に必要な費用よりも高くなっています。

私はこのような企業に対してもう一度校正条件の検討をすることをすすめています。この検討で校正費用の削減になる上に、計測器管理についての理解が深まり、また所有する計測器の経年変化の傾向もつかめるようになります。

校正費用削減の方法

ではどのように校正条件を検討し、費用を削減すればよいのか?を具体的に説明します。

校正ポイントの見直し

もし、メーカーの一括校正を利用しているのであれば必要な機能に絞って校正をすれば校正費用を削減できます。

例えば、製品の出荷検査で抵抗測定機能を使っているデジタルマルチメータの場合、一括校正だと使っていない電圧や電流の機能も校正されます。メーカー校正の際に抵抗機能に限定すると校正費用は1/3以下になります。

また抵抗測定機能の中でも例えば1Ωレンジしか使わないのであれば、その他のレンジは校正をしなくても大丈夫です。交流のなどは使用する周波数以外は省略できます。

極端な話ですが、もし電圧測定機能が故障していて電圧を正確に計測できなくても、検査に使用している抵抗測定機能が正常で校正できていれば問題はありません。

校正精度の見直し

校正試験の中には校正の精度を選べるものがあります。通常校正料金の安いものを選ぶと校正結果の桁数が少なくなったり、校正不確かさが大きくなったりします。これらの数字は高精度であればよいというわけもありません。

もし、使用方法に対して校正精度が不釣り合いに高くなっているなら、校正精度を見直してもいいと思います。

私の経験を基にお話しすると、検査装置の校正は検査に必要な数値の1桁多い校正値、1/4以下の校正不確かさであれば大丈夫かなと思います。

この方法は使えるケースも少ないし、コスト削減の効果も大きくないですが、トレーサビリティとかの理解に役立つので検討する価値があると重います。

自局校正をする

同じ種類の検査装置が何台もあって1年十同じような校正をしているのであれば、自局(自分で)校正を検討してみるのが良いです。

自局で校正をするためには自前で標準器を用意しないといけないのでメリットとデメリットがあると思いますが、規模の大きな現場ほど自局校正の効果が大きくなります。

自局校正のメリット

  • 外部校正機関での校正に比べて安い
  • 校正のために機器が使えなくなる期間が短い
  • 計測管理や品質保証の能力アップ 最終的には認定校正事業者になれるかも?

自局校正のデメリット

  • 自局校正のための標準器を用意しなければいけない
  • 自局校正を実施する技術者の時間の確保、教育

デメリットの中の標準器はレンタルで借りてくるという選択肢もあります。その場合は校正されているものを借りれば、全台を校正するよりはかなり低コストです。結局は自局校正できる技術者を用意出来るかどうかの問題でしょうか。

まとめ

この記事では計測器の校正費用を削減するための方法を説明しました。計測器の校正費用を削減するための方法は次の3つです。

  • 校正の試験点を減らす
  • 校正の精度を下げる
  • 自局で校正する

難易度は試験点→精度→自局校正の順でハードルが高くなります。でも大きなメーカーの品質保証部門では代替自局校正をやっていると思います。同種の機種が20台くらいあれば自局校正がいいんじゃないでしょうか。

まだメーカーの一括校正を利用している方はぜひ検討してください。このブログに質問をいただければ、簡単なアドバイス程度なら返信させてもらいます。