計測器の校正試験の前に理解したい3つの重要点

2020年1月9日

計測器には校正試験が必要です。「校正ってなに?」って方は先日校正試験について記事を書きましたのでこちらを参考にして下さい。

校正試験の際にはどの値を校正するかということを決める必要があります。この設定は校正事業者にお任せでもOKです。例えるならば、アラカルトのメニューかシェフのお任せメニューかどちらかと考えればわかりやすいですね。

この記事では自分で校正点を設定する場合(アラカルトメニュー)の設定方法について説明します。

必要な機能、必要なレンジに絞って校正する

高性能なデジタル計器は複数の機能と複数のレンジが備わっています。機能とは、例えば直流電圧、交流電流、交流電力などが測定できます。対してレンジというのは100Vレンジ、10Vレンジなどになります。

校正事業者のお任せコースでお願いすると、計測器に搭載されている全機能、全レンジをとりあえずまんべんなく校正します。だからあまり使わない機能も同じように校正されて校正料金が高額になりがちです。

実際は、校正試験というのは必要な機能、レンジだけを校正すれば問題ありません。極端な話だと、故障している機能やレンジがあっても必要な部分が正常に校正できていればOKです。

とりあえずはレンジの最大値、詳しくしたければ複数の代表値

ひととおり全機能を校正するのであれば、各レンジの最大値を校正します。10Vレンジならば10V。200Vレンジなら200Vを校正します。

加えて、レンジの最大から0までを等分に区切って校正します。100Vレンジなら20V、40V、60V、80V、100Vとします。これはレンジの中間がゆがんでいることがあるためです。レンジの直線性と言ったりします。この校正は1つの機能でどれか1つのレンジだけやればOKですし、余裕が無ければやらなくても大丈夫かも。

校正桁数の決定

デジタル計器の場合は種類により桁数が違いますが、校正値を何桁まで出すかも校正の前に決めないといけません。校正値の桁数が大きくなればなるほど校正料金も高額になります。

桁数を少なくして料金を安くしてほしいという注文は多くの校正事業者では受け付けていないと思います。それでも校正校正事業者の比較を見ると、桁数が少ないければ安いという傾向はあります。桁数少なくても良いということであれば安い事業者へ依頼できます。

ここでは簡単に説明するために桁数が校正精度に比例しているように書きましたが、本当は校正の精度は「不確かさ」という指標で表します。不確かさが小さくなれば校正精度は上がり、桁数も大きくなります。

不確かさの話を始めると長くなるのでここでは省略します。とにかく校正の前には自分の必要な校正精度(桁数)を決めておいて、校正事業者に相談してみるのがいいでしょう。もしかするとより良い方法を提案してくれるかもしれません。

校正有効期間の決定

校正試験には有効期限があります。これは校正事業者が決定するのではなくて、計器の使用者が決定するものです。では校正の有効期限はどのように決定すればいいのかを説明します。

校正試験は定期的に実施するわけですが、校正の有効期間というのは校正実施の間隔になります。この期間計測器が正常に動作していれば良いのですが、計測器に不具合が見つかった時にこの期間が問題になります。

例えば、出荷検査用の計器に校正後6ヶ月で不具合が見つかったとします。不具合が校正後1日で発生したかもしれないし、校正後5か月20日で発生したかもしれないし、正確なところはわかりません。最後の校正から不具合発見までの間の結果はすべてあやふやになってしまいます。

計測や検査がどのくらい重要なものかによりますが、この間に計測してしまったものには対応が必要になります。再計測・再検査するとか、市場に出てしまうものだと回収などもあります。

校正有効期限を3年とかにすると、この対応しなければならない範囲が増えます。校正後2年半で不具合発生となると2.5年分の製品を全部回収です。

このような事態が発生しないように校正有効期限は計測対象の重要度を考慮して決めます。簡単な始業前点検で計器の有効性を確認する場合もあります。

しかし、ほとんどの計測器は校正有効期限を約1年にしています。約1年にしていて後で問題になることはほぼないと思いますが。

また、きっかり1年にしておくと実際は340日くらいで校正になりますので、徐々に校正日が繰り上がってしまいます。これでもよければ問題ありませんが、たいていの組織では校正有効期限は1年後の月末にしているようです。

まとめ

この記事では校正試験の前に決定無ければならない3つの点にについて説明しました。

  • 校正ポイントの設定は必要な機能、必要なレンジに絞って校正してもよい。
  • 校正精度、校正桁数は計器の用途に応じて決定する。
  • 校正有効期限は計測器の重要性を考慮して決定する

と、このように書きましたが、これを理解した上で校正を依頼している事業者にどうすればいいかアドバイスをもらえばよいかなと思います。多分お客さんからの質問であれば良い回答をくれると思います。