JCSS(ISO/IEC 17025) 品質マニュアルの作り方 第6章4項.設備について

2019年9月20日

17025の6.4は設備です。「6.3が施設で6.4が設備?何が違う?」と思う人もいるかもしれません。この施設とは建物、設備とは機器、特に標準器をのことです。6.4はなかなかボリューミーですが頑張って解説します。

6.4.1 設備の利用可能性

この項目は6.4の出だしなので一般的なことが書いてあります。逆に当たり前のことができていないとこの項目の不適合として指摘されてしまいます。

校正機関は活動の適切な実施に必要で、結果に影響を与えるうる以下の設備が利用可能でなければならない。
・測定装置
・ソフトウェア
・測定標準
・標準物質
・参照データ
・試薬および消耗品
・補助器具を含む設備

ISO 17025 6.4.1

「利用可能でなければならない」の部分ですが、必ずしも所有しなければならないではないようです。例えばリース契約になっていて標準器の所有権は別の企業になっているなどの場合でも適合とされます。

それとは異なり、毎回レンタルで借りてくるとか、他社とシェアして使っているといった場合は不適合になります。

判断が難しくなりそうなケースも出てきそうですが、この後の標準器の校正のところでもこの項目に関係する部分がありますので、利用可能な状態かどうかは規格書を全体的に見て判断したほうがいいですね。

6.4.4ー6.4.5 使用、復帰前の確認

6.4.4では導入する前、復帰させる前に適合検証をしないといけない

校正機関は設備を業務使用に導入する前または行使用に復帰させる前に、規定された要求事項への適合を検証しなければならない

ISO/IEC 17025 6.4.4

まず、業務に導入する前はわかりますが、復帰させる前って何でしょうか。設備は修理、点検などにより使用中止にする場合がありますが、この後の使用再開について要求事項の適合を確認しないといけません。

修理は修理した人が確認できますが、点検は復帰前の適合確認の手順が必要です。6.4.5だと必要な性能(不確かさ等)も確認しないといけないので性能確認も一緒にします。

6.4.6 校正実施

校正に使用する測定器/標準器は以下の時に校正されなければならないとされています。

測定の正確さ又は測定の不確かさが、報告された結果の妥当性に影響を与える(及び/又は)

ISO/IEC 17025 6.4.6 ポツ1

これは不確かさのバジェットシートに関係します。不確かさを計算するときに経年変化を1年で切っていれば1年おきに校正しなければなりません。そのほかに長期で変化する要因を考慮している場合はその期間ごとに校正が必要です。

だからと経年変化をすごく長く取ると「ほんとにこの値でいいんですか」と審査員に聞かれちゃうので、やはり1年おきに校正するのが妥当です。

その設備の校正が、トレーサビリティを確立するために要求される

ISO/IEC 17025 6.4.6 ポツ2

「その設備」とは標準器以外の結果に影響する設備です。例えば以下のようなものがあります。

  • 質量測定に使うはかり
  • 温度計
  • その他 値を仲介するようなもの

余談ですが、私の事業所には校正設備で比の標準があります。これは標準器不要で自己校正できるんですが、定期的な自己校正の記録もちゃんと取っておきます。

4.6.8 校正シール

~設備の使用者が校正状態または有効期限を容易に識別できるように、ラベル付けを行うか、~識別しなければならない

ISO/IEC 17025 6.4.8

校正を行った機器は校正シールを貼りましょう。バーコードでも良いです。

日本電気計器検定所などで校正を行った機器には校正シールが付いてきますが、JCSSで求められるラベル付けには校正の”日付”(年月日)が無いといけません。 私は「日付は年月まで」と自分たちで勝手に定義していたら不適合を食らいました。

ですので外部で校正した機器にその校正機関のシールが貼ってあっても自局で改めて校正済みのシールを貼る必要があります。外部で張ったシールに校正日まで書いてある場合は?うーん、ちょっとわかりません。分かる人がいたらコメントお願いします。

ちなみにシールには校正日と期限の2つを書かないといけません。校正日は日まで書きますが、期限は月まででOKです。月末までっていう解釈になります。

6.4.10 中間チェック

設備を~維持するために中間チェックが必要な場合はこれらのチェックは手順に従って実施しなければならない。

ISO/IEC 17025 6.4.10

6.4.10では「中間チェック」という言葉が何の定義もなくいきなり現れるので、最初は何だ?と思いました。

ほとんどの事業者は標準器の校正を1年ごとにやっていると思いますが、それよりも短い期間で、標準器が壊れていないか、正常に作動しているかを確認するのが中間チェックです。

私は校正試験を行うごとに自分のスペアの標準器を同じ試験方法で校正してスペア標準器の前回校正値とギャップが無いかを確認しています。これは旧17025の5.9.1.Cの試験の反復の要求によるものです。

この際に履歴にギャップが無ければ、標準器が問題がないことの証明になり、中間チェックの役割を果たします。

6.4.11-12 補正、調整

校正及び標準物質データに参照値又は補正因子が含まれる場合、~参照値及び補正因子が更新され、有効に使用されることを確実にしなければならない。

ISO/IEC 17025 6.4.11

~意図しない設備の調整によって結果が無効となることを防ぐために、実行可能な対策を講じなければならない。

ISO/ICE 17025 6.4.12

以前このブログで、校正値の使いかたについて説明しました。校正値は、合否判断と補正の2つの方法で使うことができます。

17025では 校正に用いる標準器の値は補正して使いなさいと言っています。補正因子のある場合はとありますが、補正因子が無い場合などないです。(国家標準など一部の特殊な奴はないのかもしれませんが、分かりません)

また6.4.12では、標準器の調整機能により意図せず調整されないよう対策しろと言っています。確かに標準器を補正して使うように運用しているならば、いつの間にか標準器が調整されてしまったら困ります。

校正に用いるような高度な計測器は調整トリマーが付いている場合がありますが、たいてい管理者以外が勝手に調整できないように鍵がついています。デジタル機器ではパスワードのかかっているものもあります。

逆に筐体に穴が開いていて外から調整できるものもあります。このような計器は校正には向きません。

ただし管理者であっても、私は標準器を調整することはお勧めしません。なぜなら標準器の校正はたくさん履歴を取って経年変化の傾向を把握することがとても重要だからです。調整をするとその時点で履歴は意味がなくなってしまいます。

6.4.13 記録の保持

試験所校正機関活動に影響を与える設備の記録を保持しなければならない。適用可能な場合、以下の事項を含めなければならない。

a) ソフトウェアとファームウェアのバージョンを含む設備の識別
b) 製造業者の名称、型番の識別及びシリアル番号またはその他固有の識別
c) 設備が規定された要求事項に適合していることを検証した証拠
d) 現在の所在地
e) 校正の日付、校正結果、調整、受け入れ基準及び次回校正の期日又は校正周期
f) 標準物質の文書、結果、受け入れ基準、関連する日付及び有効期間
g) 設備の機能に該当する場合、保守計画およびこれまで実施された保守
h) 設備の損傷、機能不良、改造又は修理の詳細

ISO/IEC 17025 6.4.13

設備に関する記録をつけなければいけませんが、ここでは3つの記録があればいいと思います。

まず、保有設備一覧。保有設備一覧には機器の名称とシリアル番号、メーカー、場所を書きます。これでa) b) d)の要求は満たせます。その他に通し番号とかあるとよいかも。

次に校正記録一覧。これには機器を特定できる番号(通し番号)と校正しなければならない機能、校正周期、校正期日を記録します。校正結果は一覧にできないと思うので通し番号などに紐づけて各機器の校正結果を保存します。これでe)の要求を満足します。

標準物質を扱っている場合は同様にf)の対策を実施します。

最後に保守記録です。保守記録は保守するたびにペラ紙1枚でいいので追加していきます。記録には 故障(または計画保守)→ 保守(修理、点検、交換など)→ 回復確認 → 再使用の許可 のような順番で書けばよいと思います。これでg) h)の要求を満たせます。

ちょっと良くわからないのがc)なんですが、あんまり聞かれたことが無いです。一般的に妥当と思われる機器を使っていれば審査では聞かれないのかもしれません。

設備の測定能力と事業者の測定能力の関係は不確かさを計算すれば十分だし・・・。「規定された要求事項」というのも謎です。私の知らない量目の審査で使われているのかも?

まとめ

この記事ではISO/IEC 17025:2017の6.4章「施設と設備」について説明をしました。6.4章長かったです。

設備については測定機器全判が含まれますので、ここは重要な章です。この記事を読んで理解の助けになればうれしいです。