ISO/IEC 17025(JCSS) 不確かさの算出の方法(前半)

2019年9月30日

JCSSのロゴ付き校正証明書には校正値の他に”不確かさ”の記載をすることが義務づけられています。一言で説明するのは難しいんですが、不確かさとは測定のばらつきの大きさを定量的に示した数値です。

不確かさ以前は”精度”が使われていてこちらの方が直感的にはわかりやすかったのですが、全世界的に共通化を図ろうと、不確かさが使われるようになりました。

この記事ではJCSS登録申請の際に提出する不確かさのバジェットの作り方について説明します。

不確かさとバジェットシート

不確かさが測定に用いられる前は”精度”や”誤差”が使われていました。精度とは測定値と真の値の近さ、誤差というのは測定値から真の値を引いた数値です。

ここで問題になったのは”真の値”をどうやって求めるか?ということです。実は、真の値とは計算によって測定することはできません。測定によって求めた値には必ず誤差が含まれ、この誤差の量を知ることができないからです。ということは測定によって、誤差や精度は求められないということになります。

ですので”不確かさ”という概念が作られました。不確かさは測定ではなく、測定の周囲の不確かさを作る要因すべてを足し合わせることで求められます。不確かさの要因を一覧にしたものをバジェットシートといいます。

JCSS制度では登録更新時に校正事業者の校正不確かさとバジェットを提出しなければなりません(JCSS登録申請書類作成のための手引き P4 添付書類11)。この値は各校正機関の校正測定能力として認定機関に登録されます。全事業者の一覧はこちらでみられます。

校正測定能力は小さいほどその校正事業者の校正能力が高いことになります。校正能力が高いほうが技術力をアピールできるため、各事業者が校正測定能力を小さくしようと頑張る傾向があります。

しかし、校正測定能力は各事業者の設備や規模や目的に合った能力であるべきですし、校正測定能力が大きくても、それはそれで存在価値があります。校正測定能力が小さくないと認定を受けられないこともありません。

バジェットシートの内容

不確かさとは試験に紐づいています。ですので校正試験毎に不確かさのバジェットシートを作る必要があります。不確かさとは校正された機器についているものではないことに注意してください。

バジェットシートを書く上で、まず、試験の中において不確かさの要因となるものを上げてゆきます。これは試験のやり方や計器によって違いますので、皆さん自身で考えてみてください。要因は不確かさの大きいほうから5つ以上あげられれば良いと思います。

不確かさの要因の中で、必ず上げなければいけないものが4つほどあります。以下それぞれについて説明します。

標準器の校正の不確かさ

JCSSの校正試験に使う標準器はトレーサビリティを確保するために、必ず校正をしていると思います。JCSSの校正に使う標準器は必ずトレーサビリティを確保しなければならないので、定期校正を行っていると思います。この校正証明書の校正の不確かさを使います。

証明書に載っている不確かさは「信頼の水準約95%」と書かれていると思います。難しいことは省きますが、これは不確かさを2倍して表記していますよ。ということです。なのでこの不確かさの値はバジェットシート内では1/2して使用します。

標準器の経年変化

前項の標準器ですが、校正値がついているのは校正年月日の値です。標準器の値は刻々と変化してしまうので、この変化の最大量を不確かさ要因としてあげます。

例えば校正を定期的に毎年行っている場合は1年間の最大変化量を計上します。年間の最大変化量は、標準器の仕様書に経年変化や年間安定度などの言葉で書かれているはずです。

標準器、測定の温度特性

経年変化と同じように仕様書には温度特性も書かれているはずです。校正試験に使用している試験室が±1℃で温度が変わるようなら1℃あたりの値の変化も不確かさ要因になります。

試験室の温度制御が±1℃であれば1×温度特性、±5℃であれば5×温度特性の値を使います。

経年変化と温度特性は仕様書の数値を参考にするのも良いですが、自分ので経年変化と温度特性を試験してその値を使うこともできます。一般的に自分で試験したほうが、不確かさを小さくすることができます。

校正試験結果のばらつき

どんなに正確な標準器や温度制御を使っていても、何らかの理由で試験をするたびに試験結果がバラついてしまうようでは、小さい不確かさは得られません。ですので繰り返し試験を行い、結果がどれくらいばらつくのかを記録します。

ばらつきを計算するには最低3回の繰り返し試験が必要です。ある程度信頼できる数値を得るためには10回ほど繰り返し試験を行って不確かさの値を求めるのが良いでしょう。

試験結果から不確かさの値を求めるにはエクセルのstdev()関数を使います。

その他の不確かさ要因

以上の4つは最低含まれているべき要因ですが、試験によってはこれ以外にも要因が存在します。例えば標準器の他に仲介器や測定器を使用する場合はその特性に起因する不確かさ。またデジタル計器を使っていれば、計測器の分解能に起因する不確かさなど、要因はたくさん上げられます。

私はわからないときは素直に審査員に聞いてしまいます。審査員はコンサル禁止なのでアドバイスをしてくれる立場ではないのですが、「このバジェットは何が不足していますか?」と聞くと大抵の審査員は答えてくれます。

前半のまとめ

この記事ではバジェットシートの作り方について説明する予定でしたが、予定より文字数が多くなってしまったので、ここまで前半として、後半はまた別の記事にしたいと思います。