2020年に量産?硫化物系全固体電池の量産を発表したマクセルの技術とは

2022年7月15日

2019年のノーベル賞では旭化成の吉野彰先生がLiイオン電池の開発で受賞され話題になりました。Liイオン電池は私たちの暮らしに大きなインパクトがありましたが、最新の電池業界は「全固体電池」の実用化競争に入っています。この記事では全固体電池と、量産を発表したマクセルについて調べてみました。

全固体電池とは

全固体電池とは、従来の電池に比べ、多くのメリットがある次世代電池ですが、特に電気自動車分野での複数の課題を解決できる切り札とされています。少し前にこのブログでも取り上げました。

Liイオン電池も素晴らしい電池なのですが、電気自動車に乗せるとなるとまだ解決しなければならない課題があります。

全固体電池は燃えない

Liイオン電池は内部に有機系の溶剤を使用しています。液体の溶剤が入っているため事故の際は電池のラミネートが破れて漏れ出してくる恐れがあります。この溶剤は発火の恐れがあり、最悪自動車が炎上してしまいます。

全固体電池は内部に溶剤を使用してませんので溶液が漏れ出てくる心配はありません。内部の電解質は難燃性で、燃えないこともないのですが、電気自動車はガソリン車と違い燃料を積んでいませんので、もともと火が付きにくく、発火の危険は小さいでしょう。

全固体電池は動作温度が広い

Liイオン電池は内部に液体の電解質を持っています。この電解質は低温では凍結し、高温では沸騰します。なので使用温度域は自然と0℃付近から100℃付近に限定されます。

しかし全固体電池は液体の電解質を使用していないので内部が凍結したり沸騰したりはせず、使用温度域を広く取ることができます。

全固体電池は充電時間問題を解決するかも

現在のLiイオン電池ではガソリン車と同じ距離を走るために、数時間充電しなければなりません。ガソリンスタンドに行って充電するのに3、4時間とか待ってられません。

この問題は全固体電池でもまだ解決されていませんが、Liイオン電池に比べて全固体電池では充電時間を短くできる可能性があります。将来的にはガソリンスタンドの充電でもドライバーが待っていられる程度まで短縮されるはずです。

全固体電池量産を予定する企業

少し前に全固体電池の情報収集をしていたので業界の勢力図は何となく頭に入っていましたが、今回報道のあったマクセルについてはほぼノーマークでした。マクセルってオーディオテープの会社?

電池メーカーのマクセル

マクセルの製品を見ると電池やエレクトロニクス製品、記録媒体が中心のようです。やはり電池を作っていたんですね。そういえば赤いラベルの電池はよく見るような気がします。

もちろん前から全固体電池の研究も行っており、2018年に全固体電池開発のニュースリリースも出していました。

自社のLiイオン電池高容量化技術の 「ULSiON(アルシオン)」を使って容量従来比1.5倍の全固体電池を開発したそうです。

リリースには容量の絶対値の表記はなく、トヨタが3倍、村田製作所が100倍とか言っているのに比べると少なめですね。この○○倍は参考になりません。

マクセルと協働する三井金属

2019年12月にマクセルと協働している三井金属から量産準備の発表がありまして、それで少しニュースになっていました。全固体電池の実用化はTDKやFDKがすでにやっているので目新しくもないと思いますが。

三井金属は上記マクセルの全固体電池の電解質を生産しています。ニュースリリースから読み取れることはあまり多くないですが、三井金属はマクセルの全固体電池に需要があると見込んで固体電解質の量産の準備をすることになりました。

一方、村田製作所は?

このマクセルのニュースから全固体電池について情報を集めていたら、同時期に村田製作所からも全固体電池に関するリリースがでていました。いや、こっちの方がすごいよ。他社の一般的な製品に対して100倍の容量!

このブログを始めて分かったんですが、村田製作所は全固体電池でもトップクラス、5Gで使われる高周波の基板材料でもトップクラス、iPhoneに使われている高精度の積層セラミックコンデンサでもトップクラス。

私はSoftBankなんかより村田製作所の先見性に驚かされています。技術的にも代えがきかない技術をたくさん保有しています。

まとめ

この記事では全個体電池の量産を発表したマクセルについて調べてみました。全個体電池の量産自体は日本初ではありませんが、村田製作所やTDKなどにつぎマクセルが全個体電池の量産を開始したことにより市場のプレイヤーが増えてきたことに意味があります。

各社でしのぎを削っていただいて、ガソリン車に代替するEVのバッテリーシステムを日本発で実現してほしいと思います。