計測器管理に必須の「標準室」について

2020年9月24日

私は毎日いろいろな計測器を触れていますが、どの計測器も温度管理が重要なポイントになります。このような機器の温度管理には恒温室や恒温槽を使いますが、その中でも特に標準器を管理する施設を標準室と言います。

標準室はISO 17025、JCSS制度で要求されるため、間接的に9001や14001にも関わってきます。この記事ではISOやJCSSの観点から標準室や温度管理、湿度管理の要点について解説します。

標準室とは?

標準室とは工業系の試験室の中で、特に校正試験や標準器の維持管理を行う施設を指しますが、そのような施設に対してははJIS Z 8743(試験場所の標準状態)に定義があります。その一部は次のようになっています。

2.1  標準状態の温度 標準状態の温度は,試験の目的に応じて20℃,23℃又は25℃のいずれかとする。 

2.2 標準状態の湿度 標準状態の湿度は,相対湿度50%又は65%のいずれかとする。 

2.3 標準状態の気圧 標準状態の気圧は,86kPa以上106kPa以下とする。 

2.4 標準状態 標準状態は,標準状態の気圧のもとで標準状態の温度及び標準状態の湿度の各一つを組みあわせたものとする。

JIS Z 8743

電気標準室の場合は23℃、50%が多いようです。これはカナダの国研の電気標準室の年間の平均気温が23℃であったからと聞いたことがあります。機械系は20℃が多いようです。

上記に加えて標準室の温湿度の許容差も定義されています。

温度許容差(℃) 

温度0.5級  ± 0.5 

温度 1  級  ± 1 

温度 2  級  ± 2 

温度 5  級  ± 5 

温度 15 級  ±15 

備考 温度15級は標準状態の温度20℃に対してだけ用いる。 なお,5〜35℃の温度範囲を常温という。

JIS Z 8743 表1

湿度許容差(%) 

湿度 2級  ± 2 

湿度 5級  ± 5 

湿度 10級  ±10 

湿度 20級 ±20 

備考 湿度20級は標準状態の相対湿度65%に対してだけ用いる。 なお,45〜85%の湿度範囲を常湿という

JIS Z 8743 表2

これらの許容差は小さければ小さいほど良いというわけでもありません。小さい許容差は大きなコストが要求されるのであくまでバランスを考えた設計が必要です。

この許容差はもちろん試験精度に影響しますが、その他に校正試験の不確かさに影響します。不確かさのバジェットシートに「温度係数」を計上している場合、その値は許容差(℃)✕温度係数(例えばΩ/℃)になります。不確かさを小さくしなければならないのであれば、それに見合った許容差が必要になります。

空調設備

ここまでの標準室の条件や許容差を踏まえて空調設備は設計されることになります。温度と湿度を両方高精度に制御するには加湿や除湿がかなり正確でないとうまくいきません。例えば一度に標準室を使う人数を見誤っていると温度、湿度とも許容差を外してしまいます。

一般的な家庭用のエアコンは温度の増減はできますが、湿度は除湿しかできません。また湿度の指定もできません。このため標準室のような恒温恒湿環境を実現する空調は「特殊空調」なんて呼ばれたりします。

特殊空調は目標の温度に対して大幅に温度を下げて、湿度100%の状態を作って、空気中の水分を結露させます。そこから目的の温度まで戻してやると、ちょうど良い湿度、温度になります。

例を上げると、夏場の標準室は40℃近い外気を一度14℃くらいまで冷却し、水分を取ってから23℃に戻して供給しています。これ方法はとっても効率が悪いです。私の事業所も40℃近い夏場であってもヒーターが常に稼働しています。

さすがに最近は室内の空気を除湿して大気に水分を放出するシステムができているようです。冬場は逆の操作で標準室内に加湿します。この方法であれば無駄な加熱冷却が無いですし、加湿器の水のトラブルもありません。

空調が故障したら?

ではここからは空調が故障した時の対処を考えてみます。もちろんどう直すかという技術的な対処でなくて、JCSS的にはどのような処理を行えばよいかを解説します。

JCSS登録事業者であれば空調設備についても登録をしているはずです。その装置が稼働停止になったのであれば、少なくとも報告書は必要でしょう。

現状確認・校正業務の停止

ISO 17025は校正試験の実施場所と試験環境を明確にすることを要求しています。空調の故障が発覚した時点で登録された試験環境を満たしているか確認します。満たしていなければ、認定校正はできません。その際は校正業務の停止となります。

修理の検討・修理の実施

空調が故障したら修理をする必要がありますが、丁寧にやりたいのであれば、故障個所と修理の方法を明確にして、書類を作成します。加えてこの修理方法に対して最高責任者の実施許可を得ます。そして修理が終わった後に空調の機能回復がされたことの確認の結果も書いておきます。

校正再開の許可

空調が治ればいつでも業務再開が可能というわでもありません。業務再開の判断は最高責任者か管理者が決めます。私は一律で空調復帰から24時間後としています。まぁ温度ならしとかあるのでこのくらいでいいんじゃないでしょうか。

記録の保管

ここまでの流れや得た許可などは専用の用紙に記録をしておくと良いでしょう。これはNITEの監査の際にとても役に立ちます。温度ロガーに変な外乱が見られれば必ず原因を聞かれます。そこで空調の不具合の記録がすっと提示できればとても印象が良いですね。

まとめ

ここまで校正試験に必須な標準室について説明をしました。各事業所にそれぞれの事情があるため、校正担当者の都合だけで空調の仕様を決めることは難しいでしょう。しかし、この記事が空調の仕様を決める際の参考にはなったと思います。