5G通信の注目企業 アンリツ

2022年7月15日

「5G」は2020年に実用化が予定されている新しい通信規格です。

注目の次世代モバイル規格「5G」通信

現在のセルラ通信は、異なる事業者が開発した商品でも、同じ通信規格で設計されていれば世界中どこへいっても使用できます。これは3Gから現在の5Gに至るまで3GPP(Third Generation Partnership Project)においてこの標準規格の策定作業が行われているためです。

5G規格の策定が進み、5G技術を使った製品開発が盛んになりつつあります。4G(LTE)との比較で見たとき、5Gは、従来のスマホ通信分野だけでなくIoT機器などへの導入から対象市場範囲がさらに拡大することが見込まれています。

この5G通信規格で需要が増えると見込まれている分野はいくつかありますが、その多くが日本企業がたかいシェアを持つ分野です。実は中国のファーウェイも高速通信機器の分野では高いシェアを持っていましたが、2018年の米中貿易摩擦で世界の市場から締め出されてしまい、その分の需要が日本の企業に回ってきています。

(漁夫の利ですね)

そのような5G関連需要で大きな利益を得ると予想されている企業の一つがアンリツです。アンリツは5G対応の高速通信機器を設計する際に、機器が設計したとおりに動作しているかを検査する測定機器を製造しています。

アンリツの得意分野

アンリツの測定器の説明をする前に、5Gがどのくらいのインパクトを持っているのかを説明しておきます。

5Gでは、通信速度を10Gbps程度に引き上げる方向で検討されています。通信速度を向上するためには800MHz~1GHzの帯域幅が必要で、現在の4G(最大3.5GHz程度)よりも高い周波数帯の電波が必要です。また、4Gで10ms(0.01秒)程度だった無線区間の遅延を、5Gでは1ms(0.001秒)と1/10まで短縮する方向で検討されています。

これほどの高速、低遅延の通信を行うには従来よりさらに高周波、広帯域の機器を設計する必要があります。4Gで用いていた検査方法では十分ではないかもしれません。

アンリツは5G規格の登場に合わせて、いち早く通信用機器用測定器を5Gに対応させています。世界の主要なチップセットベンダ、通信事業者、端末メーカなどとの協業も多く、早くから通信基地局シミュレータやテストシステムの開発を行っています。

また、開発、製造、品質保証で必要となる各種基地局シミュレータ、テスタ、製造ライン用測定器など、3G通信時代からの蓄積があります。この経験は、5Gでの測定器開発にも活かされており、既に主要チップセットベンダを始めとする多くの5G製品メーカにアンリツの測定装置を納品しています。

IoT分野にも期待

アンリツはIoT分野にも強みを持っています。たとえば5G通信機器は低遅延が必要になり、アンリツはこの技術の蓄積があります。この技術はさまざまなセンサーのデータ収集、解析に役立ち、例えば生産現場の自動化や自動運転に役立てられています。

決算から見る利益

アンリツは2018年第3四半期から急速に利益を伸ばしています。それまでの決算では5Gの先行投資を行うフェーズでしたが、急速に利益を回収に来ています。

特に計測器の売り上げが急拡大しており、前の四半期の4倍に膨れ上がっています。これは確実に5Gの影響であり、今後もしばらくこの傾向は続きそうです。

ここまで5Gの先行投資で順調でない時もありましたがやっと努力が報われてきました。決算も2019年第1四半期から黒字転換しています。

しかもアンリツ発表の資料ではまだまだ本格的な需要拡大期には入っていないようです。その上、需要増の予測は国内だけでなく世界的に見込めるらしく、特に北米で先行投資があるようです。

今後の5G通信の予定は

  • 2018年後半 北米で前倒しで商用運用開始
  • 2019年   中国で商用運用開始
  • 2020年   日本で商用運用開始

となっていて、今後の動向から目が離せない感じです。

まとめ

このようなアンリツの好調さを反映したのか株価は2017年の初頭から切り返し、だいぶ高値圏まで上がってしまいました。5G時代に活躍する企業としてアンリツ自体はこれからまだのびしろがありますが、株価はすでに織り込んでしまったかもしれませんね。

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