ラズパイとキャンディパイで完全ワイヤレスサーバー

2020年3月4日

ラズパイ(Raspberry Pi)はワンボードPCといわれる分野で一番有名なデバイスです。私はもともとUNIX(SolarisとLinux)のエンジニアだったのでLinux OSを採用しているラズパイは得意分野なんですが、今まであまり記事にしませんでした。

今(2020年くらい)はLinuxはほぼサーバー用です。サーバーはどこかのデータセンターにおいてあるのが普通なので、ラズパイのように小型のワンボードにするメリットをあまり感じなかったからです。

でも唯一うまみがあるとすれば、WIFIルータなどの中継点を経由しないでモバイル網で直接Internetに接続すれば、組み込み用途にはいいかなぁと思っていました。

今回の記事ではラズパイにCandy Pi Liteというデバイスをつなげて4G網経由でサーバーを構築してみたのでその手順を紹介します。

ハードウェア

Candy Pi Lite

Candy PiはRaspberry Piにつなげてモバイル端末網でインターネットに接続ができるCandy Line社の通信機器です。Candy PiシリーズはRaspberry Pi専用のデバイスでCandy Line社は(HWは)このCandy Piシリーズしか製品がありません。

Candy Pi社のリンクを張っておきます。株式会社インベンティットの社内ベンチャーみたいです。

Candy Piは通信回線の種類とかから何種類かに分かれています。

  • Candy Pi Lite + : 高速通信向け 21000円位
  • Candy Pi Lite LTE-M : 省電力用途向け 13000円位
  • Candy Pi Lite : 低速通信向け 14000円~17000円くらい

Lite+はKDDI版とDOCOMO版とSoftBank版があります。LiteはLTE版と3G版があり、両方ともDOCOMO回線専用のようです。LTE-M版はマルチキャリアでDOCOMO、KDDI、SoftBankとも使えます。

注意しないといけないのはLite LTE-MとLiteのLTE版は違う物でLTE-Mはマルチキャリア、LiteのLTEはDOCOMO専用です。もうちょっとわかりやすい名前のほうが・・・。

私はLTE-M版を買いました。一番安いし、高速通信が必要なら5G版まで待っていたでしょうし。低速通信なのでGPIO端子で通信します。USBケーブルを使いません。

ラズパイ(Raspberry Pi)

ラズパイはRaspberry Pi 3 Model Bを使いました。でも持っているならRaspberry Pi Model A+とかで良いと思います。最近のラズパイは高速化や機能強化で電力消費が半端ないです。

使えるラズパイの種類はほぼ全部ですが、一覧にしました。

  • Raspberry Pi Zero WH
  • Raspberry Pi Zero(要はんだ付け)
  • Raspberry Pi Zero W(要はんだ付け)
  • Raspberry Pi Model A+
  • Raspberry Pi Model B+
  • Raspberry Pi2 Model B
  • Raspberry Pi 3 Model B
  • Raspberry Pi 3 Model B+(電源プラグ寸法:内径:φ2.1mm、外径:φ5.5mm)
  • Raspberry Pi 4 Model B(電源プラグ寸法:内径:φ2.1mm、外径:φ5.5mm)

この他にASUSのTinker Boardも使えます。(Pi Zeroが一番かも?)

SIMカード

実はSIMカードが一番重要です。SIMカードは各事業者でグローバルIPかプライベートIPを割り当てるか異なっていて、インターネット側からサーバーにアクセスするにはグローバルIPが必要です。サーバーを作るのであればグローバルIPが必須です。

できるだけ安いSIMでグローバルIPを振ってくれる事業者は次のようなところがあります。

  • ASAHI ネット LTE(固定IP)
  • イプシム (固定IP)
  • インターリンク LTE (固定IP)
  • イオンモバイル
  • OCN モバイル ONE

固定IPは電源を入れなおしても常に同じグローバルIPを振ってくれます。固定IPならIPアドレス直打ちでもサーバーにアクセスできます。

固定でない動的IPの場合は電源を入れる度にIPが変わってしまう可能性がありますが、ダイナミックDNSなどのサービスを使うと解決できます。私はMydnsを使っています。

ダイナミックDNSは電源入り後から導通まで少し時間がかかりますが、それでもOKというならば固定IPは不要です。固定IPでなければイオンモバイルが一番安く480円/月で利用できます。

私はイプシムを使いました。イプシムは固定IP不要なら500円/月にできるので必要な時だけ固定にしようと思っていました。しかし、動的IPの時はプライベートIPになってしまいます。多分もう解約します。

OS

OSイメージはDebianベースのラズパイ専用OSのRaspbianです。RaspbianにCandy Piの動作に必要なソフトが全部入った状態でOSイメージが配布されています。Candy Piのサイトからダウンロードできます。

OSが入ったSDカードの作製方法は普通のラズパイと一緒です。

ソラコムSIMを使う場合はこれだけで通信できます。私のイプシムはAPNの設定が必要でした。APNの設定についてはこちらのページを参考にしてください。

起動・通信

再起動すると自動的に通信事業者へつなぎに行きます。

モニターとキーボードが無ければこの機器を操作する方法はありません。しかし、このためにモニターを準備するのもなんなので外部からSSHできるようにします。

このバージョンのRaspbianは/bootフォルダに名前が”ssh”のファイルがあればSSHサーバーを起動します。/bootフォルダはWindowsでもアクセスできるのでSDカードをWindowsに着けて/bootフォルダにsshという名前のからファイルを作ります。

このSDカードを使ってラズパイを起動し、しばらくしてからSSHクライアントソフトでアクセスするとリモートで操作することができます。

できました?(このSSH周りが一番トラブルの多いポイント)

サーバー構築

ラズパイがインターネットとつながったらサービスをインストールしてサーバーにします。

サーバーの構築は普通のラズパイと一緒なのでここでは説明しませんが、有線のサーバーと違うところは通信量に制限があることです。普通に”apt-get update”とやるだけで何MBと消費するので気を付けましょう。

Linuxのサービスのインストールや設定はこのブログにもいくつか紹介しています。検索でLinuxを探すと見つかると思います。

まとめ

この記事ではラズパイの完全無線化の方法について紹介しました。ラズパイをモバイル回線経由でインターネットにつなぐためには次の物が必要です。

  • ラズパイ本体
  • Candy Pi
  • SIM(グローバルIPが良い)
  • OS Candy Piが配布 Raspbianベース

ここではCandy Piを使用しましたが、USB接続のモデムなど、これ以外の選択肢もあります。私がCandy Piを選んだ理由は実績があったというだけです。

最後に「完全無線のラズパイサーバー」は電源が有線だぞと言われそうですが、実はラズパイは5Vのモバイルバッテリーで動きます。今は100円ショップでもいいのがありますので、完全無線が欲しい人はモバイルバッテリーを使いましょー。

サーバーを完全無線にする意味はどのくらいあるのか分からないですが、必要な人はぜひ参考にしてください。