量子コンピュータの注目企業 フィックスターズ
量子コンピュータは今までのコンピュータ、いわゆる古典コンピュータの性能を大きく上回り、従来のセキュリティーをすべて無力化してしまう可能性を持っています。
しかし、現在はまだその性能は実用化レベルになっておらず、今後の発展に期待されています。
前回は量子コンピュータの技術分野で注目されるNF回路設計ブロックを紹介しました。この記事の中で量子コンピュータの量子ビットの仕組みについても触れていますので、興味のある方は見てください。
NF回路設計ブロックは量子コンピュータを実現するために必要な計測器のメーカーでしたが、今回記事にするフィックスターズは、バリバリ量子コンピュータに取り組む企業です。
1 組み合わせ最適化問題に最適化された量子アニーリング方式
まず、量子コンピュータには2種類あることを説明します。1つは量子ゲート方式。もう1つは量子アニーリング方式です。
量子ゲート方式は従来のコンピュータと同様に汎用的な計算を実行するために設計されました。しかし、量子アニーリング方式は組み合わせ最適化問題に特化した方式です。
組み合わせ最適化問題の例で一番簡単なのは「巡回セールスマン問題」です。
巡回セールスマン問題はいくつかの都市を巡る必要なあるセールスマンが、どのような経路で都市を回れば最短距離で全部の都市を回れるか?というものです。
この都市の数が3、4くらいであれば人間が考えても最適な解が求められますが、都市の数が増えてくると取り得る経路の種類が指数関数的に増加します(実際は指数関数よりも増加が早い)
1000や10000都市になればコンピュータを使っても計算に長い時間がかかります。
しかし、量子コンピュータはこれらの計算を1回の計算と同じ計算コストで行うことができるので、組み合わせ最適化問題にもってこいなんです。
実際の世界ではセールスマンが10000都市を巡る予定をコンピュータで計算させることは無いと思いますが、
例えばパスワード解読などに応用すれば、何億通りのパスワードを総当たりで計算したとしても計算コストは1回分になりますので容易にパスワードを解読することができます。
なんか怖いでしょ。
この問題をプログラムにする際に、私達が使うコンピュータと量子コンピュータではプログラムの作り方が異なります。
なぜなら、私達が使うコンピュータは計算するだけコストがかかるので条件に合わない無駄な計算は行わないようにプログラミングされます。
(巡回セールスマン問題に例えると、ずっと同じ都市に居続けるような条件)
しかし、量子コンピュータはこれらの無駄な組み合わせを計算から省くことができません。それに無駄な計算を行っても計算コストが変わらないので省く必要すらありません。
ちょっと長くなりましたが、量子コンピュータは今までとプログラム作り方が変わるということです。
今までと異なった理解がプログラミングに必要になります。
2 フィックスターズの技術
ずいぶん話を伸ばしてしまいましたが、フィックスターズが強いのは、前述の今までと異なる手法によるプログラムの作成です。
まだフィックスターズの量子コンピュータ分野の主力は導入支援のようですが、これは協業関係にあるカナダのD-Wave社の量子コンピュータを導入を支援するもののようです。
しかし、量子コンピュータは今までの半導体のコンピュータと違い、半導体のクロック速度で計算のスピードが変わるというものでは無いと思うんですよね。
だから将来、ハードの発展がピークを迎えたあとは、どのようにプログラムを作るかが量子コンピュータの技術の中心になると思うんですよね。
国内のこの分野ではフィックスターズが先頭を走っています。
今後どのくらいの速さで量子コンピュータが進化していくか楽しみですが、フィックスターズにはぜひ頑張ってもらいたいです。
ベアボーンキットで個人が量子コンピュータを買える時代がくるといいなーと思っています。