注目の次世代モバイル規格「5G」通信の4つのキーテクノロジ
モバイル通信の進化を裏で支えているのが、現在のドコモやソフトバンク、KDDIなどの携帯キャリアが持つ無線データ通信網の技術革新です。特に、大幅な通信速度向上を実現する節目を“世代”(Generation)と呼び、現在日本で主流なのは第四世代「4G」になっています。
そして、2020年の実用化を目前に話題になっているのが、次世代の「5G」です。5Gでは当然、通信速度が向上し、人々の暮らしを一変させる可能性を持っています。
5Gになると通信はどうなるか
5Gでは、通信速度を10Gbps程度に引き上げる方向で検討されています。詳細は検討中のようですが通信速度を向上するためには800MHz~1GHzの帯域幅が必要で、現在の4G(最大3.5GHz程度)よりも高い周波数帯の電波が必要です。 4Gで10ms(0.01秒)程度だった無線区間の遅延を、5Gでは1ms(0.001秒)と1/10まで短縮する方向で検討されています。
この目標は2010年の通信性能に比べ速度で100倍、容量で1000倍の性能という飛躍的な進化が求められ、単純に高い周波数を用いて通信の高速化をするだけでは実現できません。そこで5G通信では通信の高周波数化に加え、周波数利用効率を向上させることと、それぞれの通信の単位にスモールセルを用い、セル内で広い周波数帯域を有効利用することで、通信の高速化を実現しています。
5G通信の新しいキーテクノロジー
NTTドコモは、5Gの実現に向けて「ファントムセル」と「Massive MIMO」などの複数の技術の組み合わせを提案しています。この記事では5G通信にはどのような新しい技術があるのかを紹介します。
ファントムセル
これはしたの図のように異なる周波数帯を使用したマイクロセルととスモールセルの間をユーザーの通信データと制御データが行き来していますが、この二つを分離して通信を行う仕組みです。
この方式により将来、高周波数帯に通信が移行する際にもデータを複雑化することなく異なるセルに通信を展開することができます。また高い周波数の通信において、通信に利用されるセルIDを仮想かすることで、通信のオーバーヘッドを提言し、また利用効率の低いセルを発見する技術も進歩しています。
NOMA
NOMAは5G通信で検討されている非直行多元接続方式のことで、下りリンクの通信の際にセル内の複数のユーザーの信号を基地局が同一無線リソース上に多重化し、同時に送信できるユーザーデータを増やすことができる技術です。この技術により通信の際に基地局でデータ送信の順番待ちをする時間が減り、より遅延時間の少ない通信が可能になります。
NTTドコモはこのNOMA方式を推進しており、独自で優位性の検証を行っています。その結果では従来の方式に比べてスループットが30~36%改善しています。
ネットワークスライシング
5Gでは様々な種類の膨大な数のデバイスを快適に利用するために、「ネットワークスライシング」という技術を活用しています。またこの方式では分散型の基地局も含めてキャリアアグリゲーションの技術を拡張することができます。
現在のネットワークでは複数のサービスを区別なく一つのパイプ(データが流れる道)でまとめて送っていますが、あるサービスが混雑すると、同じパイプを利用しているほかのサービスも使いづらくなることがあります。
5Gでは、用途ごとにネットワークを仮想的に専用のパイプを区切って利用することで、互いのサービスが影響せず多種多様なデバイスに同時にサービスを提供することが可能です。
ビームフォーミング
5Gではより周波数の高い電波を用いて通信を行います。周波数の高い電波は回折が小さくなり、ビルの谷間や山岳地帯の通信が滞ってしまいます。そこで5G通信ではビームフォーミングという技術を用いて、電波を特定方向のユーザーに向けることにより、遠くまで飛びやすくします。ユーザーが移動した場合は、ビームトラッキングという技術を用いて、ユーザーを追いかけるように電波の飛ぶ方向を調整します。
また、これまでい利用されてきた周波数帯よりも長い距離を飛びづらいため、その利用には工夫が必要です。5Gでは4Gの周波数帯でエリアを広く確保しながら、必要に応じて5G用の周波数を利用するというやり方が考えられます。
まとめ
この記事では5G通信に用いられる技術について説明をしました。5G通信は2019年に機器が登場し2020年には私たちの身の回りにも普及してくるといわれています。通信スピードの面からいえば、5Gの導入は4G導入時にインパクトの数倍の大きさになりそうです。5Gが私たちに今までなかった体験を与えてくれることを期待しています。