韓国への輸出厳格化のフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストは何の製造に使われるのか?

2019年9月13日

日本と韓国の間に貿易摩擦の問題が持ち上がっていますが、「徴用工問題」関連の話に焦点が集まってしまって何が規制されてどんな影響があるのかがよく伝わって来ません。このブログは一応技術的な内容を話題にしているので、今回はこの件について調べてみます。

どういう事件なのか整理

世界の物流の進化によって、簡単に海外から物が買えるようになりました。これは核兵器とか毒ガスの原料にも当てはまるので、これらの危ないものには全世界的に輸出規制がかけられています。

日本でもキャッチオール規制という名前で軍事転用の可能性がある物の輸出については事前に経済産業大臣から許可を得る必要があります。しかし、この規制には軍事転用以外の取引を阻害しないようにホワイト国認定を得た国への輸出は個別に許可を得る必要が無い特例があります。

ホワイト国になるためには輸入量の管理や軍事転用されないような対策を求められます(詳細未確認。テレビ情報の写し。)。韓国はアジアの国では唯一ホワイト国認定を得ていました。

しかし、今回韓国はこれらの物資の輸入量、使用量、在庫料の計算が合わない(未確認だけど9数%違うらしい。)ため、経済産業省が実態を調べていたようですが、やはりホワイト国から除外するべきと結論になったようです。

ホワイト国から除外される対象はフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素です。この物資に関しては取引のたびに経済産業大臣の許可を得る必要があります。禁輸ではないです。しかし、前述のようにどこかに流出しているようなので韓国内に在庫がなくて騒ぎになっています。

フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素は何に使う?

これらの物資は全部IT製品用です。韓国はサムソンがGDPの20%、SKグループが10%、LGが9%を締めており、IT製品がなくなったら大変です。これら3つの物資はどのような分野に使われているのでしょうか。

フッ化ポリイミド

ポリイミドはフィルム状の素材で電子部品の絶縁材料です。耐高温、高強度で他分野で利用されています。デュポンの商標だとカプトンです。メーカーの方とかはカプトンテープ使ったことがあるかもしれません。

ポリイミドにフッ素を付加することでいつくかのメリットが生まれます。まずフッ素と同じように撥水性撥油性、熱的安定性が向上します。高電圧部品の絶縁材料で難燃性はとても重要で、高電圧のかかる基盤や端子の材料に用いられます。

またフッ化ポリイミドは高い透明性と低い吸湿性が有り、光学分野や光通信分野に応用されています。また絶縁性能が高いことも有り、液晶パネルの材料にも用いられます。

さらに、フッ化ポリイミドは誘電率が非常に低いという特徴があります。基盤の誘電率は信号のスピードと反比例するため、通信スピードを上げるためにはできるだけ低い誘電率の素材を利用しなければいけません。5G開始もあり今後更に需要が増える見込みです。

まとめると5Gの高速な電気回路の微細化には高絶縁部品が必要で、高速な光通信には高透明材料が必要で、高周波化には低誘電率素材が必要で、それらの特性を全部持つのがフッ化ポリイミドです。

レジスト

輸出規制の対象担っているレジストはレジストとしか記載がないのですが、多分半導体用フォトレジストのことです。フォトレジストは半導体製造の際に材料に塗布する感光体です。半導体パターンがどんどん小さくなっているのはフォトレジストの進化が一つの要因です。

フォトレジストに求められる性能は以下のようなものがあります。

  • 塗布性 シリコンの材料に数nmの均一な薄さでレジストを塗布します。
  • 感光性 光を受けた部分が変質してエッジングで削れない部分になります。
  • エッジング耐性 強いエッジングにも耐えられる耐性 

フォトレジストにはこれらの特性をバランスよく満たすことが求められます。この分野では誇らしくも日系企業が世界シェアの90%を締めており、韓国は代替を探すそうですが、そううまく行くかどうか・・・。

まとめると、レジストは半導体製造で欠かせない薬品で世界のほとんどを日系企業が作っています。

フッ化水素

フッ化水素は半導体のエッジング工程に使います。世界の8,9割を日本の企業が製造しています。残りは中国で作っていますが、中国産のものは高純度の精錬ができないそうで、産業用の高純度のものは日本産しか有りません。

フッ化水素はシリコンの基盤から酸化膜を除去することのできる薬品で、半導体製造工程では欠かせません。また半導体の微細パターンは超ミクロな不純物も不良の原因になるため、不純物の入っていない高純度のフッ化水素で洗浄を行う必要があるんです。

フッ化水素の水溶液はかの有名なフッ酸です。フッ酸は地上最強の毒として有名ですが、過去に韓国の企業で漏洩事故が起きています。そのため韓国では現在フッ化水素を製造していません。

まとめると、近代の超微細パターン半導体には日本産の高純度フッ化水素が絶対に必要になると言うことです。

この件に関する韓国、北朝鮮、中国、アメリカについて

この件を調べていたらネットに面白い意見があったので紹介します。

韓国のムン大統領は北朝鮮に対して融和政策を取っていますが、当初韓国の行方不明の物資は北朝鮮に流れていると推測されていました。確かにフッ化水素はサリンの原料になります。しかし、韓国も敵国に毒ガスの原料を送るか〜?と思います。産業用でも韓国の数割を北朝鮮で使うというのは不自然です。

となると行き先は?多分中国です。中国内にサムソンもSKも工場を持っているので、この日本の3物資は必要です。しかし、日本はアメリカの同盟国であるため、アメリカと貿易戦争中の中国へ日本から3品を輸入するも韓国を経由したほうが都合がよかったと思います。

ホワイト国への輸出は1案件を詳細に確認しないので中国に仲介貿易しているかはわかりませんし、しても(たぶん)違反ではないです。でも、アメリカがこのことを知っていたら絶対日本にいいますよ。「韓国をホワイト国からはずせ」と。ホワイト国から外れると1輸出ごとに調査されますので中国に仲介していることを隠せなくなります。

ここでサムソンとSKはどう思うか?今後中国の工場では日本製の3物資は使えなくなる可能性が高いので早急に3物資を中国企業から供給してもらわければならない。現実にサムソンとSKは中国と台湾の企業に3物資の調達を依頼したそうです。

で、で、で、実は2019年6月に米系企業のマイクロンの広島工場が可動開始しています。これを聞くとだからこの時期にやったのか〜と思ってしまいます。憶測ですが。

まとめ

まとめると、韓国への輸出手続きを厳格化された3物資に関しては半導体メーカーには絶対必要で、韓国の産業はかなりの部分を半導体製造が締めています。今回の騒ぎは禁輸措置では無いですが、韓国産業にいくらか影響があると思います。

日韓の騒ぎは米中の貿易戦争の一部のような雰囲気です。昔よりも海外から簡単にものが買えるいい時代ですが、こんな騒ぎも増えたよな〜と感じました。