DMMで微小電流を正確に測るときのポイント

2021年1月12日

電気計測で小さな小さな微小電流を測る場面はけっこうあります。でも微小電流は計測環境に大きく影響を受けるので測り方のノウハウがないと正確に測ることが難しくなります。

この記事ではデジタルマルチメータを使って微小電流を正確に測る方法を紹介します。

デジタルマルチメータの電流レンジを使って測る

微小電流を測るときはデジタルマルチメータ(DMM)を使う方法が一般的です。というかそれ以外はあまり思いまつきません。

ほとんどのDMMは電流計測機能を持っていますのでケーブルを直結すればそのまま測れます。しかし電圧と違い電流計測は場合によっては回路に手を加える必要があり、ちょっと頭を使います。

電流は水の流れと同じです。少しでも漏れがあるとそこから流入、流出して正しい流量が測れません。水の場合は隙間をふさげばよいですが、電気の場合は世の中のすべてのものは電気を通すので電気の流れを制御してやる必要があります。

ガードを使う

電流測定で流入流出する微小な電流を漏れ電流とか漏洩電流とか言います。漏れ電流は回路の外側からやってくる(外側に逃げていく)のでこの流れを回路に入れずにうまく逃がしてやることが重要です。

高機能のDMMにはこの漏れ電流の逃がし先であるガード端子がついています。微小電流を測るときはこのガード端子を使いましょう。

ガード端子と組み合わせて使うには同軸ケーブルが有効です。同軸ケーブルは電流を流す心線と漏洩電流を逃がす外皮線でできています。心線はDMMのHiとLo端子に接続し外皮線はがーど端子に接続します。

微小電流の測定に影響を与えそうなノイズ源は外皮線に誘導電流を発生させますが、この電流はガード端子へ流れ、心線への影響を減らすことができます。この結線を使うだけで電流の測定ばらつきがかなりおとなしくなるはずです。

振動から遠ざける

微小電流の測定では少しのことも誤差要因となります。代表的なものの一つにケーブル中の摩擦電気効果があります。ケーブルは柔軟性のために導体と絶縁体の間で滑りを生じますが、滑った導体と絶縁体の間に静電気が生じます。それが導体に乗りノイズ源になります。

通常はこの摩擦電気効果によるノイズは小さく無視できますが、微小な電流を測る際には大きな誤差要因になります。例えば装置のモーター部分に触って振動を拾っているとか、ファンの風を受けて動いているといったことが原因になります。

この問題を解決するためにはケーブリングを工夫することが重要ですが、ケーブル自体をローノイズケーブルに変更することでもノイズを低減できます。

ローノイズケーブルは内部の導体と絶縁体の間にすべり層を作らずに導体と導体の間にわざと滑る層を作ります。もしくはケーブルを細くしてまったく滑り層を作らないようにしたりもします。

装置から離れる

デジタルマルチメータのガード端子を使うと漏洩電流の他に空間を伝わるノイズからの影響も除去できます。しかし、ケーブルがガードされていても端子はむき出しの状態になっているはずです。この端子は人間の体などとの間に静電結合を作り、ここに微小ですが電流の流れが起きます。

この電流を削減するためには人間が測定系に近づかなければ良いのですが、とはいえ計測器を人間が操作しなければ測定ができません。

このような問題に対処するために私はC#とGPIBの自動制御を使用しています。さらに付け加えると同じ電源に大きなノイズを発生するような重機がつながっているならば、これらが動いていない深夜に自動制御で測定をするとさらに測定精度を向上させることができます。

このような自動制御の技術はこのブログで紹介していますので参考にしてください。右上の検索で「GPIB」や「C#」と検索すると見つかります。

電流センサーを使う

この記事のタイトルと少し違いますが、世の中にはいろいろな使い方に適した電流センサーが作られていますので、コストはかかるかもしれませんが、それらを利用することも良い方法です。

電流センサーというと非接触のカレントプローブを思い出しますが、カレントプローブは微小な直流電流の計測にはあまり向いていません。微小電流の計測にはトランスコンダクタンスアンプを使います。

トランスコンダクタンスアンプは電流ー電圧変換アンプで微小電流の測定で用いられます。自作して作ることもできますが、私はFEMTO社の超低ノイズ電流電流アンプを使っていました。

私はこのアンプに電圧計をつないでブリッジ回路の電流検出に使っていました。ゼロ電流を検出するために使っていたのでこのアンプで微小電流の絶対値を測ったことはありませんが、FEMTO社の製品なので1フェムトアンペアまで測れるんじゃないかなぁと思います。

結び

今の記事では微小電流の測り方について紹介しました。微小電流について書くとなぜかページビューが多くなるんですよね。みんなが微小電流測定に悩んでいるということでしょうか。

ページビューが伸びるので今後も書くことがあれば電流計測について記事にしたいと思っています。コンダクタンスアンプの自作についてとか面白いでしょうか。