すっごい大電流からすっごい微小電流までの測り方あれこれ

2020年9月22日

仕事でよく受ける相談が「電流を測りたい」です。電流と言っても交流直流、大電流、微小電流、いろいろあるので、一筋縄では行かないものです。この記事ではすっごい大き電流とすっごい小さい電流の測り方を紹介します。

1mAから1Aの普通の電流を測る

DMMの電流レンジで測る

100mAから1Aくらいが1番簡単に測れる電流の大きさです。1番簡単に測る方法はマルチメータ、テスターの電流レンジで測る方法です。

しかし、この方法は気をつけないと、計器の中に入っているヒューズを切ってしまうことがあります。仕様の限界付近の電流を測ると一瞬の増減で最大電流を超えてしまい、気がつくとヒューズが切れていることがありました。

また、定格電流以下でも一瞬インパルスが入って、ヒューズが切れる前に計測器が壊れたという経験もあります。マルチメータのフロントパネルには測れる最大の電流値が書かれているのでこの値の1/10くらいの値でとどめて置くことが大事です。

このような理由があり、私はこの方法は簡単だけどおすすめしないようにしています。

電流検出抵抗(シャント抵抗)を使う

実際はシャント抵抗を使うのが最も一般的な方法です。シャント抵抗と言っても普通の1Ωのリード抵抗でOKです。回路の一部に1Ω抵抗を入れてその両端の電圧を計器で測ります。オームの法則から電流(=電圧値/抵抗値)を計算できます。

この方法では回路全体の抵抗がシャント抵抗の分大きくなるので注意が必要です。この回路全体の抵抗を出力インピーダンスとか言ったりしますが、シャント抵抗の値が出力インピーダンスよりも十分小さくなるようにシャント抵抗を選定します。

例えば、出力インピーダンスに比べてシャント抵抗値が1/1000以下になるようにします。しかし、これでも電流は0.1%小さくなるので、用途にあった抵抗値を使うことが重要です。

この方法は電圧と抵抗を使って正確に電流を測ることができるので電流校正の際に使われます。日本のトレーサビリティでは電流はジョセフソン電圧標準とホール抵抗素子を使って組み立てられています。

大きい電流の測り方

大電流は一部の産業用のヒーターや巨大な電動機などに用いられます。私が聞いている中では10V10000Aというものもありました。10000Aはすごいなぁ。

大きい電流であっても基本的にはシャント抵抗で測れます。しかし、シャント抵抗の発熱は電流の自乗に比例して大きくなるので注意が必要です。不十分な定格の抵抗を使っていると焼き切れてしまいます。

大電流を測る場合の抵抗は抵抗値が小さくて定格電力が大きい抵抗を使います。金属製でサイズが大きいものだと覚えると間違いが無いです。

日置電機製 シャント抵抗 HS-1

シャント抵抗の抵抗値は数mΩくらいを使いますが、得られる電圧が100mVになるくらいがいいと思います。100Aのシャント抵抗は1mΩ位を使います。ほとんど金属の塊です。

それ以上の大電流測定も研究が行われているようですが、ここでの紹介は省略します。

クランプメータを使った測り方

大きい電流は測る際にはクランプメータを使った方法もあります。最近のクランプメータは直流、交流との計測ができますが、シャント抵抗に比べると精度が低いです。

クランプメータの利点はシャント抵抗と異なり、回路を切らなくて良いことです。現場では電流を測りたいが、電源を止めることができない、結線を外して測定器を組み入れることができない場合もよくあります。クランプメータは活線のまま洗濯ばさみのように回路を挟むだけで測れます。これで200A~1000A、もっと大きな電流を測れるものもあります。

小さい電流の測り方

小さい電流を測る技術は主にセンサーなどの使われます。例えば、1TΩ(=1000000000000Ω)以上の抵抗を測る場合はpA(1/1000000000000A)の電流を計測します。

小さい電流もシャントで測ることができますが、あまり現実的ではありません。電流が小さくなると得られる電圧も小さくなり、測定精度を上げにくくなります。また電流が小さくなると漏洩電流や誘導電流の影響が無視できなくなってくるので、測定テクニックが必要にもなります。

小さい電流の計測ではマルチメータの電流レンジを使うのが一番簡単な方法です。しかし電流レンジはデスクトップの高精度なものでも数十μAでしょう。これよりも非常に小さな電流は汎用の計測器では測ることが難しくなります。

直流微小電流を測るエレクトロメータ

例えば、省電力な装置の回路の電流を測ることは、すごい難しいです。これは接続した計測器の影響で回路の特性が変わってしまうためです。

電流の大きさにもよりますが、小さい消費電流の測定は電流計測専用の装置が必要になります。直流電流の測定では「エレクトロメータ」を用います。

デジタルエレクトロメータ(ADC)

この装置で1fAまで測れます。1fAは1/1000000000000000Aです。

そして、残念ですが、ほとんどのエレクトロメータは直流電流しか測れません。微小な交流電流を測るとなるとさらに難しくなります。

交流の微小電流を測るにはロックインアンプ

ロックインアンプは電流に同期して測ることで、非常に小さな交流電流も測れる計器です。ほとんどの場合は測定電流に同期した同期信号が必要になります。オシロスコープでみるとわかりますが、交流微小電流はほぼノイズに埋もれているため、同期信号がないと周期性のある信号かどうかもわかりません。

デジタルロックインアンプ(NF回路設計)

同期信号が得られれば、この計測器で10fAくらいまで測ることができます。

電流の変化を見るにはカレントプローブ

オシロスコープを使うような短時間の電流の変化を見るにはカレントプローブが使われます。カレントプローブはクランプメータと同じように非接触で電流を測れる計器です。ケーブルを洗濯バサミのように挟むことで電流が測れるので、例えば新開発の製品の評価などに使われます。

まとめ:しかし電流計測は奥が深い

この記事では、普通の電流、大電流、微小電流の測り方について書きました。やっと「計測ブログ」らしい記事が書けました。

でも、よく考えると、この記事以外にも注意する点はいっぱいあるかなと・・・。電流をどんな目的で測るかによって対策が異なります。 計測装置についても簡単に書きましたが、微小電流の測定はノイズ対策などのノウハウがたくさんあります。そのノウハウも書く機会があれば紹介します。