全固体電池の注目企業 トヨタ
先日テスラが一般向け電気自動車のモデル3の予約販売を開始しましたね。モデル3の中には沢山の電池が詰まれています。
電気自動車は排気ガスを出さないクリーンな乗り物として注目されていますが、走行距離の延伸や充電時間の短縮が課題で、電池革命が起こるかどうかか普及の鍵といわれています。
今回は電池に革命を起こすだろうといわれている全固体電池について説明します。
また、全固体電池開発の注目企業についても紹介します。
1 リチウムイオン電池の普及
全固体電池の原理を説明する前に、もっとも普及しているリチウムイオン電池について説明します。
リチウムイオン電池は、正極、負極、セパレータ、電解液、ケースから構成され、電解液の中をリチウムのイオンが行き来することで電圧を発生します。
エネルギー密度が高く、比較的長寿命というメリットがあり、現在広く採用されている電池の原理です。
しかし、リチウムイオン電池には燃えるという最大の欠点があります。このため自動車や、交通機関への導入にはハードルが高くなってしまいます。
乗り物へのリチウムイオン電池の採用といえば、三菱重工が開発した海上自衛隊最新鋭潜水艦の「りゅうおう」にリチウムイオン電池が採用になりました。
りゅうおうは通常航行時にはディーゼルエンジンで稼動し、リチウムイオン電池への充電を行います。
そして、作戦行動時にはディーゼルエンジンを止め、リチウムイオン電池のみで稼動します。
これにより、作戦行動時にはうるさいディーゼルエンジンの稼動音を出さない上に、ディーゼルエンジンの稼動に必要な酸素を必要としないため、長時間の潜行が可能となりました。
実は、潜水艦へのリチウムイオン電池の採用は、その前の潜水艦「ずいりゅう」から予定されていましたが、技術不足から見送られたそうです。
日本のリチウムイオン電池も潜水艦に乗せられるレベルにまでになりましたが、全固体電池はさらに高性能、高安全性を実現できると考えられています。
2 全固体電池のメリット
全固体電池は名前のとおり、材料に電解液を使わないすべて固体材料で作られる電池のことです。
発電にリチウムイオンを使うことは同じですが、電解液を使わないので電極ショートを防ぐセパレータも不要になります。
全固体電池はリチウムイオン電池に比べどのようなメリットがあるのでしょうか。いくつかのメリットを紹介します。
① 安全性が高い
リチウムイオン電池、爆発、炎上の恐れがありました。これは電解質に有機溶剤系の材料を使う必要があったためです。
全固体電池では電解質に無機系の固体材料を使いますので発火の危険性はリチウムイオンに比べて非常に小さくなります。
② 動作温度が広い
電池の材料に液体をしよしていると、温度が下がれば凍結、上がれば蒸発し、電池としての機能を果たせなくなります。
全個体電池ではこのような変質がおこりにくく、リチウムイオン電池に比べ、動作温度を広くすることができます。
③ 劣化しにくい
リチウムイオン電池は使用の過程で負極に固体の電解質のゴミがたまります。このゴミは電池の性能を落とすうれしくない副生物です。
リチウムイオン電池では発電の際にイオンだけでなくいくつかの物質が電極間を移動し、これらの副生物が作られてしまうのはどうしようもないことです。
しかし、全固体電池の場合は発電の際に、リチウムイオンしか電極間での移動がありません。ですので電池自体の性能が劣化しにくいのです。
④ 設計の自由度が高い
リチウムイオン電池をはじめ、電解液を使った電池は、液体を内部に閉じ込めるためにラミネート容器に電解液を注液しなければなりません。
そのため、リチウムイオン電池はラミネート容器の密閉性や、注液工程のため、設計がある程度制限されています。
しかし、全個体電池は液体を使用していないため、ラミネートが不要で、電池の設計がリチウムイオンよりも自由にできるというメリットがあります。
3 注目企業
ここまでの説明のように、今最も普及しているリチウムイオンに比べていくつものメリットを持つ全個体電池ですが、どのような企業が牽引をしているのでしょうか。
国内企業ではトヨタが筆頭に挙げられます。
テスラと同様にトヨタも全個体電池の安全性から、電気自動車開発の最重要点として全個体電池に取り組んでいます。
しかし、全個体電池は内部の電気抵抗が高く、充放電の際にエネルギーが熱として逃げてしまうため、効率を上げられないと思われていました。
トヨタは電池分野でノウハウのあるパナソニックと協力することでこの問題を解決しつつあるようです。
トヨタが全個体電池を実用化すれば、全個体電池のメーカーとしての成長に加えて、自社の電気自動車の売り上げも伸ばすことができますよね。
全個体電池では今最も熱い企業ではないでしょうか。