全固体電池の注目銘柄オハラが持つ技術とは?

2022年7月15日

化石燃料を使う自動車に代わって電気自動車がシェアを伸ばしているのは皆さんも知っていると思います。電気自動車はすでに実現されてからだいぶ年月が経ちますが、相変わらず電池関連の課題が解決されていないのが現状です。

ガソリン車の場合給油にかかる時間は5分程度ですが、電気自動車が満充電にかかる時間は200Vの普通充電で8時間かかります。

また現在主流のリチウムイオン電池は内部に液体の電解質を持っており衝突時に液漏れして発火する恐れがあります。

そこで電気自動車の電池問題を解決する次世代部品として全固体電池が注目されています。全固体電池は内部の電解質溶液を固体にすることで従来の電池の弱点を克服することができるといわれています。

例えば電池のパッケージが破損しても内部は固体なのでエネルギーを持った構成材料が流れ出すこともありません。また、充電にかかる時間も数分単位に圧縮できるといわれています。

電気自動車の普及に不可欠な全固体電池ですが、調査するにあたり無視できない企業があります。その企業は相模原市のガラスメーカーのオハラです。主要製品はレンズ用のガラスです。レンズメーカーでは無くて原料のガラスですね。

この記事では全固体電池の注目企業オハラについて紹介します。

全固体電池用材料 リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス(LICGC)

オハラの製品はいくつかあるのですが、その中にリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス(LICGC)があり、これは全固体電池の原料として期待されています。以下はオハラのプレスリリースです。

余談ですが、LICGCはオハラの商標になっています。オハラしか作れないのでしょうか。 リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスだと物質の一般名詞で商標が取れないような気がしますが、LICGCを商品名にして無理やりとったんでしょうか。

全固体電池はまだたくさんのハードルがありますが、その一つに内部抵抗の大きさが挙げられています。電気自動車のような大電力を出力する電池ですと、内部の抵抗が大きければ電池内部で熱になって消費される電力も大きくなり、電力効率の低下につながります。

ですので全固体電池の開発では内部抵抗の小さい材料の研究が進められています。この分野で注目されているのがオハラのLICGCなんです。

LICGCは高いイオン電導性を有する酸化物系の固体電解質です。大気中、塩水中で安定かつ、不燃性です。電池の添加材として使用した場合、充電時間を20%短縮。電力効率を21%向上することができます。

しかし、LICGCはもともと全固体電池専用の材料ではなく、リチウムイオン電池の正極に加える添加剤です。現状はリチウムイオン電池に混ぜる用途ですが、全固体電池が実用化されれば、全固体電池用の材料を作る素材につながると期待されています。

トヨタの電気自動車の開発

トヨタは長年水素を使ったフューエルセル発電の電気自動車の開発を進めてきました。それはミライという自動車で実現しましたが、その後の水素自動車の開発は活発ではないようです。

水素自動車はガソリン自動車に比べると環境負荷が格段に低いです。というかゼロです。水素自動車は水素を燃焼させるのではなく酸素との化学反応により電気エネルギーを取り出すため、排出物は水だけです。

水素を作る際に電気を使うので環境負荷が無いわけではありませんが、それは電気自動車も同じことです。

しかし、残念なことにこの水素自動車は環境問題にはとてもメリットがあるのですが、世界市場ではガソリン自動車の次は電気自動車になると認識されているようです。

理由は水素自動車は水素の扱いに高い技術が要求されます。このため水素ステーションの建設には大きなコストがかかります。また、技術レベルの高いメーカーでないと水素自動車は作れません。

結局世界は技術や環境の理由ではなく、経済的な理由で電気自動車を選んだようです。トヨタもこの動きに従い電気自動車の開発にも力を入れています。

トヨタと全固体電池材料で共同出願

オハラは2016年にトヨタと共同で全固体電池の特許を出願しています。前にも書きましたがトヨタは全固体電池の分野では国内最先端です。

J-patentで「オハラ トヨタ」と検索すると6件の特許が見つかります。特許の情報は両社のWEBに出てこなかったのですが、トヨタチームにオハラがいるとなるとかなり有望です。

しかも、トヨタは全固体電池の課題として全固体電池の内部抵抗の高さを認識しています。オハラのLICGCはイオン電導度の低さが特徴の一つなので、トヨタにとってもオハラの技術は価値があります。

全個体電池の今後

この記事では全固体電池とオハラの技術について調査しました。全固体電池は内部の抵抗値を低く抑えることが課題ですが、オハラの持つガラスセラミックスの技術は全固体電池の課題を解決するかもしれません。

最新の研究ではLICGCは全個体電池の内部抵抗の抑制に加えて電池の長寿命化にも効果があるとされています。ガソリン車と違い電池の載せ替えに大きなコストのかかる電気自動車では重要な要素です。

私はガソリン車が今後も自動車の主流であることは変わりがないと思っていますが、全個体電池が実用化されれば、原付や軽自動車の一部が電気自動車に置き換わるかもしれません。

限界集落ではガソリンスタンドがライフラインの一つになっており、収益性が悪いのに廃業ができないという話を聞きます。電気自動車が現実的になればこのような場所での需要があるような気がします。