抵抗測定の2端子(2WΩ)と4端子(4WΩ)は何が違う?

2020年7月31日

この話は先日研修会で標準抵抗器のお話したら抵抗器の端子の数の質問が出ました。この理由について説明したら結構評判が良かったのでここでも紹介しようと思ったので記事にしてみます。

標準抵抗器とは?

計測管理にかかわる人なら標準抵抗器は見たことがあると思います。標準抵抗器は電気抵抗(以下抵抗)の標準器のことです。

念のため抵抗についても説明しておきますが、抵抗とは電流の流れにくさの指標です。抵抗が大きくなるほど電流が流れにくくなります。電圧、電流、抵抗には以下のような関係があります。

電圧 = 電流 × 抵抗

抵抗は電流を制御するために使われるので電子機器の中にはたくさん入っています。これらの抵抗の品質管理に用いられるのが抵抗の親分にあたる標準抵抗器です。

端子の数と種類

標準抵抗器は結局大きな抵抗です。ただの抵抗なのに2端子、3端子、4端子、5端子まで種類があります。この差は一体何でしょうか?

抵抗値を高精度に測ろうとすると、値によって測り方をちょっとずつ変えなければいけなくなります。その関係で端子の数が変わってきます。

2端子抵抗器

2端子の抵抗器は一番想像しやすいやつです。抵抗素子は電極が2つあるのでそれぞれの電極がそのまま抵抗器の端子につながっています。

この抵抗器、どこからどこまでの抵抗値を測っているかわかりますか。

2端子の場合、表示される値はケーブルの抵抗も含めたデジタルマルチメーターのフロントパネルから先の合成抵抗です。抵抗素子だけを測ることはできません。

一般的なケーブルの抵抗は1Ω以下ですが抵抗器も0.1Ωとかだったらまともに測れません。なので小さい抵抗を測るときは4端子の抵抗を使います。

4端子抵抗器

4端子抵抗ではどこからどこまでの抵抗値を測るかをはっきりさせることができます。この「どこから」を定義点といいます。4端子の抵抗器は定義点が抵抗器の中になり、測定の精度を上げることができます。

端子は左から順にカレントHI、センスHI、センスLO、カレントLOと呼ばれます。カレントとセンスの順が逆の場合もあります。また、センスをポテンシャルと表記する場合もあります。カレントは測定電流を流す端子、センスは電圧を測るための端子です。

4端子測定の時はカレントとセンスの接続部分から逆側の接続部分までの抵抗を測ることができます。測定精度が高く10 kΩ以下の抵抗で用いられます。

3端子抵抗器

3端子抵抗器は100 kΩ以上の高めの抵抗器で使われます。100 kΩ以上の抵抗の場合は測定電流がものすごく小さくなるので外部のノイズの影響を受けやすくなります。そのためボディにノイズを逃がすガードと呼ばれる端子を設けてあります。

100 kΩ以上の抵抗の場合は測定電流がものすごく小さくなるので外部のノイズの影響を受けやすくなります。そのためボディにノイズを逃がすガードと呼ばれる端子を設けてあります。

抵抗値の高い標準器は図のようなガード端子をつける場合や2端子にして端子形状を同軸コネクタにする場合もあります。また3端子と4端子を組み合わせて5端子にした抵抗とかもあります。

デジタルマルチメータの抵抗測定機能

説明いらないかもしれませんが、デジタルマルチメータの2端子と4端子の抵抗測定は2端子の抵抗と4端子の抵抗を測るための物です。4端子の方が精度が高いのでできれば4端子を使った方がいいというのが結論です。

しかし、ケーブルの抵抗が乗ってしまう2端子測定でもデジタルマルチメータのヌル機能を使うとケーブル分の抵抗をキャンセルできます。ケーブルの先端をショートさせてヌルボタンを押すとケーブルの抵抗を含めた値がゼロに設定されます。この方法は4端子でも使用できます。

抵抗測定の温度特性と経年変化

あまり知られていませんが、計器の測定精度は年々低下します。そのために定期校正をしないといけないのですが、この変化は抵抗計よりも標準抵抗器の方が安定です。なので余裕があれば標準抵抗器を所有して抵抗計を定期校正したほうが良いです。

これと同じように使用温度によっても性能が上下します。最近の標準抵抗器は23℃で影響度が一番小さくなるように設計されています。今ほど精度が良くなかった昔の抵抗は、温度管理した絶縁油の水槽(油槽)に入れて温度が変わらないように測りました。

今でも円筒形の変な形の標準抵抗器(この記事にタイトル画像のような)をよく見ますが、あれば油槽用の標準抵抗器です。横に突き出した端子は水銀皿にはめ込んで電流を流すための物です。

まとめ

この記事では抵抗器の端子数の特徴を説明しました。端子の数は簡単に説明すると次のようになります。

  • 2端子 一番シンプルな測定方法。でも誤差要因も入りやすい
  • 3端子 高抵抗(1MΩ~)を測る際の測定方法
  • 4端子 中抵抗、低抵抗の測定方法。リード線の抵抗をキャンセルできる

結論を言うと、測定器と測定される側が4端子になっていたら4端子で測りましょう。2端子なら2端子で測るしかないです。

ただし4端子ならいつでも正確に測れるかというとそうでもなく、温度特性や経年劣化の影響は避けられません。温度特性は周辺温度の管理、経年劣化は定期校正試験の実施で低減できます。

と、いろいろと書きましたが、自分の感触ではここまで気を付ければ1/10000精度以下で抵抗が測れると思います。逆に言うとそれ以上でいいのならば考える必要ないかも。要は得られる精度と計測にかけるコストはトレードオフなので、よく考えて測りましょうということですね。