ISO/IEC 17025 : 2017の登録手続きとJCSS品質マニュアルの作り方

2022年1月21日

今回の記事の内容はISO/IEC 17025いわゆるJCSSです。これをまとめたくてブログを始めたんですよ。この記事ではJCSS登録を受ける際に提出が必要になる書類と品質マニュアルの作り方について説明します。

ISO17025は2017年11月にISO文書の改訂が行われています。一応2017年版を念頭に話ますが、詳細はその時の規則に従ってください。

JCSS制度とは

JCSS(Japan Calibration Service System)制度は、国内では校正事業者登録制度と呼ばれています。計量法とISO/IEC 17025に基づいた制度です。

JCSSには「登録」事業者と「認定」事業者の2つがあって、認定事業者は国際相互認証(MRA)の認定を受けられるので認定事業者の校正証明書は海外へ出しても有効です(MRA加入国内に限る)。

登録事業者は認定事業者以外で審査を通過した事業者ですが、私の知る限り登録と認定の違いは審査を2年おきにやるか4年おきにやるかの違いしかありません。もちろん、それに伴って手数料があがりますが。

JCSSの審査を通過して登録事業者になると校正証明書にJCSSのロゴを入れることができます(認定事業者はMRAのロゴも入れられる)。このロゴは校正試験のトレーサビリティを保証するとともに、校正事業者の校正能力の証明でもあります。「こいつは信用できる」という印なわけです。

ISO 9001やISO 14001のなかで製品検査に使う計測器が、定期的にJCSS校正をされていることを要求しています。最近では自動車メーカーが下請けの部品メーカーにJCSS校正を義務付けています。

また海外では政府調達の際に最終検査に用いた計測器のISO/IEC 17025校正の証明書を提出させるところもあると聞きます。徐々にですがISO/IEC 17025の勢力が拡大しています。

とはいえ、H28年度のJCSS登録者数は260ちょいです。なのでJCSSの責任者は日本に260人しかいません。9001なら3万以上いるのにね。果たして、この記事はだれかに読まれるんでしょうか?

JCSSを所轄する組織

JCSSを担当している団体は製品評価技術基盤機構(NITE)です。JCSSに関する情報は以下のNITEのサイトにあります。たまに資料が更新されているので新規の文書作成の際には最新の資料を使ってください。

JCSS登録の際には現地審査が行われて、やはりNITEの職員が現場に来ていろいろと指摘をいただきます。もくろんこの時にISO/IEC 17025の規定に不適合であればJCSSの登録・認定は許されません。

また年に数回NITEの本社でJCSSの責任者に対する説明会が実施されるので新規登録や更新が近いという方は聞きに行きましょう。

JCSSの登録手続きに必要な書類

JCSS登録を受ける場合にはNITEに申請書と添付書類を提出します。この添付書類ですが、非常にボリュームが大きくて作成に何か月もかかります。一度作ってしまえば次からは楽ですが、はじめは何を提出するか理解するのも大仕事です。

登録申請書類については作成の手引きがNITEのホームページにありますのでリンクを張っておきます。20冊くらいありますが一度は全部目を通しておいた方が良いでしょう。

あまりの量と難解さに初めての人は目の前が真っ暗になります。そんな人のために申請にはどんな書類をそろえればよいか解説します。提出書類は申請書と1~15までの添付書類がありますので順番にざくっと説明します。

詳細は上リンク先の「申請書類作成のためのてびき」の中に書いてあります。

会社の業務内容

申請書類の添付1には会社の業務内容や登記に関する書類を用意します。具体的には以下のような書類になります。

  • 定款
  • 登記事項証明書
  • 事業計画書

ここは大変かもしれませんが、理解しやすいところなので法務部の人とかに相談してそろえましょう。

校正事業の実績

添付書類2では現在の校正業務の実績と技能試験の結果を用意します。

  • 校正業務の実績
  • 技能試験の結果

事業実績の方は過去の売り上げとか、校正台数の推移の数字なので、調べればすぐ書けます。

もう一つの技能試験の結果ですが、実はハードルが高いです。事業者は申請前にISO 17043に準拠した技能試験を受験して、良い結果を出しておく必要があるからです。

しかも技能試験は、量目によっては毎年やっているものもあれば4年に1回のものもあります。タイミングが悪いと試験後に申請まで何年も待たないといけません。JCSS取得が決まったらすぐに技能試験の確認をお勧めします。

JCSS制度の認定を受けるためにはすでに校正業務を行っている必要があります。校正業務立ち上げと共にJCSS取得とか、不可能と思って間違いないです。

校正事業の内容

添付書類3~6までは校正事業の内容を示す書類を用意します。

  • 校正事業の組織図
  • 校正事業の担当者
  • 校正事業で使用する設備など
  • 校正施設

JCSS未登録でも程度実績のある事業者は担当者も決まっていて、設備もそれなりのものがあると思います。

JCSSは、校正担当者とその職歴、どのような設備(道具)を使って、どこで校正をやるのか登録する必要があります。

校正事業者でJCSSを持っていないところはこのあたりの文書化がまだ不十分だと思います。JCSSをいい機会にしてこれらの書類をそろえてしまいましょう。

品質マニュアル

添付資料の6から14までは内規に関する書類です。これらの書類はいわゆる品質マニュアルといわれるやつで、これを作るのが大仕事になります。私の事業所でも全部で400ページ以上あります。

このブログでも品質マニュアルのついての記事を書いています。下のリンク先に集めておきました。まだ完全ではありませんが、徐々に詳しくしていきます。(と思います)

品質マニュアル作成の資料はNITEの公開文書一覧のうち「JCSS登録申請書類作成の手引き」を参考にしてください。申請の際には「申請から登録後までの手続き」と「登録の一般的要求事項」を読んだ方がいいですが、まだ隅々まで理解できなくてもいいでしょう。

上位校正機関の校正証明書の写し

JCSS校正は国家標準へのトレーサビリティが必須です。JCSSロゴがトレーサビリティの証明になるので審査の際はトレーサビリティの有無を厳しくチェックされます。申請の際に校正証明書の写しを提出して、現地審査でさらに自局校正の記録をチェックされます。

誓約書

JCSS登録された際にはNITEのいいつけを守りますよ。という宣誓をします。

まとめ

このブログはJCSS公認でもなんでもありませんし、もちろんこのブログの通りにやってうまくいくかどうかは不明です。このブログを参考にしていただくのは構いません。というかうれしいですが、それが原因で審査がうまくいかなかったとしても、申し訳ありませんが自己責任でお願いします。

今回はISO/IEC 17025の取得に必要な書類と品質マニュアルの作製について書いてみました。次からは実際に品質マニュアルの書き方を記事にしたいと思います。