JCSS校正(ラージ)とjcss校正(スモール)は別物。

2020年5月13日

計器校正における登録校正事業者(JCSS)制度ですが、最近産業構造が変わってきているせいか、注目されることが増えてきました。

JCSSがなんだかよく分らない人はこのブログでもJCSSについて解説をしたことがありますので、まずそちらを読んでください。

ネット上でもJCSSのことについて書かれたものを何回か目にするようになってきましたが、いくつか「jcss校正」について誤った解説をしているサイトがありました。よい機会なので正しい情報を整理して記録に残しておこうと思います。

「JCSS」と「jcss」の違い

JCSS制度とは計量法を根拠法令に持つ制度で、この制度の元締めである製品評価技術基盤機構(以下NITE)により審査を受けるとISO/IEC 17025に準拠しているというお墨付きがもらえます。

NITEのお墨付きをもらうと校正証明書にJCSSのロゴをつけることができます。JCSSのロゴ付き証明書は国家標準により校正(間接的なものも含め)された証明になります。

「JCSS」と「jcss」と並べて書くとこの2つはロゴマークのことを指します。下の画像のように校正事業者が自分の校正証明書に張り付けるのが大文字のJCSSです。

JCSSロゴ入りの校正証明書を発行した事業者はすでにNITEの審査を経ているはずですので、国家標準に対するトレーサビリティを保って校正されているはずです。だからJCSSロゴのついた校正証明書は追加の証明書などは必要なく、一種の品質保証マークのような働きをしています。

実は少数ですが、小文字のjcssのロゴが張り付いた校正証明書もあります。jcssのロゴが付く校正証明書は特定標準器(国家標準)から直接校正を行った校正の証明書です。

下の画像は日本電気計器検定所でjcss校正を行った標準抵抗器の校正証明書ですが、ロゴがjcssになっています。

jcss校正の校正証明書のヘッダ

(正確には、日電検は抵抗の特定標準器を持っていないので、特定標準器の代わりとなる特定副標準器を使っています。)

余談ですが、JCSS制度初期には登録校正事業者の参照標準器はjcss校正をする必要があったそうです。まだJCSS登録事業者が少なかった時代です。しかし、登録事業者が多くなり国家標準だけでは全ての事業者の標準器を校正しきれなくなってこのルールはなくなりました。

とにかく「jcss」と「JCSS」は明確に違う試験なので気を付けてください。二つの試験がどう違うのかは次のように考えればイメージしやすいです。

JCSS

  • 利用者 計測器を使っている一般のユーザーや一部の校正事業者
  • 目 的 ISO 9001やISO/TS 16949などの規格でJCSS校正証明書が必要だから

jcss

  • 利用者 国家標準に近い校正事業者
  • 目 的 国家標準で多くの校正試験をこなせないため上位の事業者がその役目を負う

下の図はNITEのホームページに掲載されている計量標準供給と登録事業者の関係図です。図の中の産業技術総合研究所と日本電気計器検定所から発行する証明書はjcssで、登録事業者から発行する証明書はJCSSになっています。

JCSSの計量トレーサビリティ(NITEホームページより)

JCSSとjcssとロゴが違う理由

なんでJCSSはロゴを二種類に分けているんでしょうか?正解を知っているわけではないんですが、JCSSが「計量標準供給制度」と「校正事業者登録制度」の二本柱から成っているからだと思っています。

計量標準供給制度では、業界のニーズや標準供給体制の整備状況などに基づき経済産業大臣が国家標準を管理する指定校正機関を定めます。指定校正機関は指定された特定標準器を基に登録事業者に計量標準の供給を行います。

指定校正機関には産業技術総合研究所と日本電気計器検定所が指定されていますが、これらの機関は他国の指定校正機関と標準器を比較しあって、自国の標準器の正確さを維持しています。

校正事業者登録制度は計量標準供給制度により指定校正機関から得られた標準を民間の利用者に広く届ける役目を担っています。

私は、JCSSは校正事業者登録制度、jcssは計量標準供給制度を根拠にして発行されているんだろうなぁと思っています。明確にそう書いてある資料は発見することができませんでしたけど。

まとめ

この記事では大文字のJCSSと小文字のjcssの違いについて整理してみました。大文字小文字の表記の差ですが、実際は別々の試験の名前なので気を付けましょう。

最近、「jcss校正の・・・」と表記されているサイトを何度か見る機会がありました。内容を見てみるとどうもJCSSと混同しているように書いてあったので、JCSSとjcssの違いを一度整理したくて本記事を書きました。

多分ですが、jcss校正の表記を使っているサイトはSEO(Search Engine Optimization)対策のために小文字のjcssを意図的に多用している?のだと思います。

この記事のとおり、一般的な校正事業者以下の人がjcssとJCSSを混同して使っていても特に支障はないのですが、豆知識ぐらいに考えていただければいいと思います。