校正を依頼された機器の取扱はどうする?
企業の品管部門や校正事業者で働いている方は計器の校正依頼を受けることがあると思います。聞くところによると多いところでは一日に数百台も校正試験をしているところもあるようです。
そういったところはどのように計器を管理しているんでしょうか。計器によっては付属品があったり、足りなかったり。
校正試験が終わっているのか、いないのか、異常で止まっているのか、顧客の返答待ちか。たくさんの人数が見ても分かるように管理しないといけません。
実はISO/IEC 17025でも試験校正品目の取扱いという項目があります。
私は毎週数台程度の校正事業者ですが、どうやって受け入れ機器を管理するか?17025に沿った方法を紹介したいと思います。
校正対象の輸送
輸送業者についてですが、依頼者から校正事業者へ機器を輸送する場合、輸送業者の選定は依頼者の責任のようです。そうなると、返送時の輸送業者も依頼者の責任となります。(未確認です。)
ISO/IEC 17025は下請け業者として輸送業者を使うときはちゃんと手順を作ってね。と要求しています。でも試験依頼時の輸送は依頼者側の責任っぽいです。
校正事業者が輸送業者の下請けを使う場合ってどんな時なんでしょうね。
たぶん、問題になるのは校正事業者が所内の標準器をさらに上位の校正事業者に依頼して校正してもらうときです。この時に使用する輸送業者はISO/IEC 17025 (6.6)下請け使用の制限を受けます。
校正試験の受付
校正業務を行っている事業者であれば、見積もりや請求が発生すると思います。17025には「7.1 依頼、見積仕様書及び契約の内容の確認」という項目があります。
ISO/IEC 17025に準拠させるなら一連の事務手続きはちゃんと手順化されていて、さらにそれらが文書化されている必要があります(7.1.1 a)。そんな理由もあり、校正依頼の受付業務をマニュアル化(フローチャート化)するのが良いです。
相談
私の事業所では初回校正の方には必ず対面で相談する時間をいただいています。初回の方はだいたいが校正が何なのかよく分ってません。
何を校正するのか、何のために校正するのかを聞くと、当初の依頼とは異なる試験になる場合がよくあります。
方法の選定
初めての校正ではよく分っていない方もだいぶいるので校正方法の選定も言われた通りでなくて一緒に考えた方が良いでしょう。ふるーいJISの規格書を引用して「いまどきそんな方法!?」とびっくりしたこともあります。
方法の選定は、できるだけ適切で、新しい方法をお勧めしましょう。これはISO/IEC 17025(7.1.2 7.2.1.3)の要求でもあります。中には取引先からの要求だからとかたくなに否定する人もいますが、その取引先もよく分っていないケースが多いです。
納期・費用
初心者の依頼者を相手にした場合、よーく教育をしてあげないといけません。納期や費用の問題もその1つです。
よく分っていない人は納期の話をすると眉をへの字にします。そういう人は預ける時間=試験にかかる時間と思っているので手順を説明して納得してもらいます。
納期について納得してもらえれば費用もだいたいOKでしょう。費用についてもしっかり説明して納得してもらいます。
契約
試験についてすべてに合意ができたら、必ず契約を交わします。契約といっても契約書が必要なものでなくて申込書くらいでOKです。
申込書には事前の説明があって同意したよ。という条件を入れ、自筆の名前か印鑑をもらいます。契約書は試験が終わった後も大切に保管しておきます。
校正対象の保管
校正対象の保管では気を付けないといけないことが2つあります。劣化や汚染の予防と識別です。
劣化・汚染の予防(7.4.1)
私は電気計器の校正事業者です。計器の劣化に影響するのは温度、湿度だけかな。温湿度については24時間運転で記録を取っています。
電気計測器ではあまり劣化や汚染は問題になりませんが、標準物質や薬品を取り扱っている事業者は注意が必要です。
保管場所の周囲によって、良からぬものが混じってしまったり、品目によっては校正対象同士で汚染しあってしまったり。2017年版からはサンプリング業者も事業者として認められますのでサンプリングする前とした後の試験対象について汚染の対策が必要です。
識別(7.4.2)
計測器本体はシリアルナンバーが書いてあるので問題ありませんが、ケーブルや固定治具などの付属品は組み合わせが分からなくならないように識別します。
一番簡単な識別は専用ケースに収納して契約ごとに発行する伝票を箱に貼付しておくことです。伝票には校正試験の進捗を書けるようにしておけばなおいいです。
私の事業所はせいぜい人手で管理できる程度でしたが、前に見学した事業者は数百個の折り畳みコンテナケースが山積みになっていました。
校正対象の返却
試験終了後は校正対象を返却します。返却に際してJCSSでは特に制限はありません。ただ、私は返却の際にアンケートの協力をお願いしています。
JCSSでは顧客からのフィードバックを必要としていますが、アンケートの協力をお願いするのはこのタイミングが一番成功しやすいです。アンケートは必ずしも回答を得る必要はありません。アンケートを実施していることが要件になっています。
まとめ
この記事ではJCSSの規則の中で校正の受付、機器の受け渡し、機器の保管などについて説明をしました。要点をまとめると以下のようになります。
- 計器校正試験の受付については手順を作る
- 金額、期間、試験方法などを含めた契約書(申込書)を作る
- 預かった機器は劣化・汚染、または他の物との混同が起こらないように保管する
- 校正試験の完了時にアンケートを実施する
この記事では話がちょっと発散してしまいましたので、分かりにくいことがあれば質問してください。私も気づいたことがあれば質問欄に書き込んでみます。